“虐待”するか、仕事辞めるか…「虐待禁止条例」反対で活動のさいたま市P協、撤回に安堵も「終わりではない」
小学3年生以下の子どもを自宅や車内などに放置することを禁止する埼玉県虐待禁止条例改正案に反対を表明しているさいたま市PTA協議会は10日、JR浦和駅西口で、反対のオンライン署名を呼びかけた。子どもの留守番や買い物が「虐待」に当たるとされ、「子どもたちの自由を奪う」「親への負担押しつけ」と訴えた。自民党県議団が同日、改正案の取り下げを発表。同会は「保護者と子どもの声を聞いてもらえて、安堵(あんど)している」としている。
市Pは6日の委員会可決後に協議を進め、7日からオンライン署名を開始。10日午後6時現在、約2万8千人分が集まった。郡島典幸会長(49)は「今回の改正案は子どもの自由を奪ってしまう。国を挙げて子育て支援を進めている中で、親に負担を押しつけるだけの条例で、容認できない」と反対の理由を説明。会員の保護者からは「私たちは虐待をしていることになってしまう。今の生活実態からすると、虐待せざるを得ないか、仕事を辞めるしかない」との声が上がっていたという。
子どもの安全を確保するという理念は理解している。郡島会長は改正案の取り下げを受けて、「ひと安心した。子どもたちを守ろうとの思いは一緒。反対して取り下げられたから、これで終わりではない」。虐待や放置による子どもの事件や事故は絶えず起きており、「ひとりで子育てをしている親たちの負担は大きい。地域社会全体の取り組みが必要と考えている。今後の対応は県議、市議、関係団体と連携をして、いい形にしていきたい」と話していた。
委員会の採決後、急きょ結成された市民グループ約10人が10日、浦和駅西口や県議会前で、「子どもに留守番頼むと虐待?」「お使いもダメ?そんなのありえない」と書かれたプラカードを持って反対を訴えた。
呼びかけた塾主宰の吉田雅人さん(73)は「塾を35年間続けてきて、保護者がこんなに怒っているのは初めて」と影響の大きさを指摘。外遊びが規制される恐れがあることから、「コロナ禍のように、子どもの心が閉じ込められてしまう。絶対にあってはいけない条例。中学生が署名したと聞いているので、ものすごくうれしい」と語った。
県庁前でスタンディングをしていた元県職員の当間健一さん(60)は、長く児童相談所に勤務した。県民に通報を義務付けていることから、「児相は確実にパンクする。子どもの命を逆に救えなくなってしまう。親に負担がかかることで、新たな虐待を生む恐れがある。誰も幸せにしない」と話していた。