埼玉のALS男性、苦しむ人に勇気を与えようと東海道を歩き抜く 一度きりの挑戦のはずが、SNSで応援続々 中山道も歩き、今回は日光街道にチャレンジ 難病者を支える基金も設立準備中 17歳のとき他界した父に「見守って」
国指定難病「筋萎縮性側索硬化症」(ALS)と診断された草加市栄町の服飾雑貨デザイナー和田義治さん(51)が10日、日光街道(約140キロ)踏破を目指し東京・日本橋をスタートした。昨年11月の東海道、今年3月の中山道に続く3度目の挑戦。自分と同じALSなど難病患者への支援基金を立ち上げた和田さんは「歩くことでALSを知ってもらい、支援の輪を広げたい」と話している。
ALSは筋肉が徐々に衰えて手足が動かなくなる上に呼吸困難を招き、発症約2~5年で死に至るとされる難病。国内に現在約1万人の患者がいるといわれる。
和田さんは約6年前、左手に極度の震えが出て、一昨年にALSと診断された。現在は左手の握力が落ち、右手にも症状が進行している。
昨年11月「脚が動く間に」と東海道(約490キロ)踏破に挑み、30日間で達成した。
「同じ病で苦しむ人に勇気を与えたい」と一度きりの挑戦のはずだったが、交流サイト(SNS)を通じて多くの応援が届き「逆に力をもらっているのは自分の方」と実感。今回の再挑戦を決意した。体が動かなくなるかもしれない不安と戦いながら、今年中に五街道の全踏破を目標に掲げた。
今回の日光街道は、和田さんが幼少期から現在まで暮らす地元の草加市を横断する。スタート初日の10日午後、和田さんは国指定名勝で634本の松が並ぶ草加松原に到達し「思い入れある道。とても感慨深い」と順調に歩を進めた。道中で必ず立ち寄ると決める場所が、春日部市一ノ割にある父親の墓。和田さんが17歳の時に病で他界した。「これからの旅の安全と体の健康を(天国から)見守ってもらえたら」と手を合わせるつもりだ。
東海道を昨年歩いた後、和田さんは自分と同じALSなど難病で苦しむ人への基金を立ち上げた。現在も支援の準備を進めている。今回挑戦する理由の一つに、この基金を知ってもらいたい思いもある。旅の途中経過は写真共有アプリ「インスタグラム」で発信し「この先の人生で何ができるか分からないが、歩くことで難病患者の一助になれば」と期待する。
今回歩くペースは1日25~30キロ。今月15日に栃木県・日光東照宮のゴールを目指す。
和田さんは「このチャレンジができなくなる日も当然来る。自分の歩く小さな一歩が大きな力に変わることを信じて、ゴールを目指したい」と話している。