埼玉新聞

 

困ったらおばちゃん聞くよ…開けない子ども食堂、子どもらの駆け込み寺に【#コロナとどう暮らす】

  • 県内各地の子ども食堂に食材を搬送する作業を行うさいたま子ども食堂代表の本間香さん(中央)=5月29日、さいたま市緑区原山

  • 訪れた人たちに弁当を提供するさいたま子ども食堂のスタッフら=6月6日、さいたま市緑区原山

 新型コロナウイルスの影響で食堂を開けない子ども食堂が、代わりとして食材や弁当の提供のほか、子どもや保護者の悩みを聞く“駆け込み寺”の役割を担おうとしている。「県子ども食堂ネットワーク」と「さいたま子ども食堂」の代表を務める本間香さん(59)は「笑顔応援企画」と銘打ち、登録している135の子ども食堂に呼び掛けた。「パン一つ、おにぎり一つでもいい。受け渡す時、『困っていたらおばちゃん聞くよ』『いつでも電話して』と言いたい。子どもだけでなく、親も笑顔にしたい」と意欲を示している。

■「第2の家庭」

 さいたま子ども食堂は今月6日、弁当の提供を行った。提供されたのは、たけのこご飯にサワラの塩焼き、豚汁などのお弁当に、寄付されたマスクや牛乳、ケーキ、チョコレートなど。料金は1家族につき500円を受け取った。本間さんによると、家族構成や連絡先を把握しており、受け渡し時に困っている様子がないかを確認して、悩みごとがあれば聞いていくという。

 子ども3人を育てる市内のシングル女性(41)は「本当にかなり助かっている。中学生の子どもたちはよく食べるし、お菓子ももらえるので楽しみにしている」。子ども食堂の存在については「明るく接していただき、暗い気持ちにならずに済む。第2の家庭です」と話した。

 「ここでのつながりが温かい」と話すボランティアの女性は、新型コロナウイルスの影響を受けて久しぶりに訪れた。「お弁当作りを手伝うことで、子どもたちとのつながりを保っていける。いつかコロナが収束して、みんなでワイワイご飯を食べられるのを待っている」

■開けない食堂

 新型コロナウイルスの感染拡大で、子ども食堂を開くことが困難な状況が続いている。県内でも今春に立ち上げようとした複数の子ども食堂が頓挫しているという。

 新しい生活様式として、3密を避けるためのソーシャルディスタンス(社会的距離)やマスク着用が必要となった。子どもたちと一緒に食事やおしゃべりをして、笑い合い、触れ合うことは難しい。

 本間さんは「今までの子ども食堂には戻れない。コロナ後、何かを生み出さなければいけない。子ども食堂として、できることを進めたい」と考えた。

 今月1日から多くの学校が再開した。学校が始まれば、悩みを抱えている子どもや保護者の存在が顕在化するとみられている。本間さんは進学も就職もできなければ、貧困の連鎖につながると指摘。「長期間の臨時休校で不登校になっている子どもがいるかもしれない。イエローゾーンからレッドゾーンに近い子どもや保護者の悩みを聞いていきたい」としている。

 この日は、ボランティアのお兄さんと親しくなったり、同年代の友人ができた小学生の男児が訪れていた。家族同士が声を掛ける様子も見られた。子ども食堂を始めてから間もなく4年。本間さんは「多くの家庭とできた絆がある。その絆を切ってはいけない。ご飯だけではないつながりを大切にしたい」と笑顔で語った。

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