トラは脚が4本「初めて知った」 全国初!「さわれるどうぶつえん」川越の盲学校に開園 74歳男性が尽力
精巧なぬいぐるみに触れて、動物の特徴を体感できる「さわれるどうぶつえん」。埼玉県川越市笠幡の県立特別支援学校塙保己一学園に誕生した学習施設は、同学園によると全国の盲学校で初という。「盲学校にトラ・ライオンにさわれる動物園を作ろうプロジェクト」に取り組む寄居町の田中博さん(74)が、長年抱いてきた思いを形にした。
「どうぶつえん」は、校舎内の教材作成室を活用している。ドイツのメーカーなどのぬいぐるみ41体を展示。壁には、ボランティアがアフリカの大地を連想させる絵を描いた。小動物は実物大が多く、ゾウやキリン、ライオンといった大型動物は部屋に収まるサイズではあるものの、子どもの体より大きい。小学部2年生の島貫朱理(あかり)さん(8)は「ライオンのたてがみはふさふさ。トラは脚が4本あるんだね。触って初めて知った」とほほ笑む。
田中さんは貯金から百数十万円を使ってぬいぐるみを購入したほか、壁画の画材なども提供。昨年10月ごろ同学園に寄付を提案し、今年5月から学校側と話し合いつつ準備を進めてきた。「子どもたちが喜ぶ顔を見られて本当に良かった」と目を細める。
幼い頃、田中さんは「春の海」作曲者で盲目の箏曲家宮城道雄が急行列車から転落して亡くなったニュースを知り、「目が見えない人たちは、命の危険と隣り合わせで生活しているのかと衝撃を受けた。その時から、何かできないかと思うようになった」と振り返る。6年前に寄居町へ転居して以降は、点訳のボランティアなどを始めた。
「盲学校の子どもたちは動物の名前を聞いても、どんな姿なのか理解するのは難しいはず。情報量が圧倒的に不平等な彼らに、世界を広げてもらいたい」と田中さん。「さわれるどうぶつえん」の構想を思いついたという。
幼稚部から高等部を卒業した生徒対象の専攻科まで96人が学ぶ同学園は、「どうぶつえん」を全ての在校生だけではなく来訪者にも開放する。寺田智礼(とものり)校長は「田中さんの強い思いが込められた場所。心からお礼申し上げる」と感謝。田中さんは各地の盲学校にも働きかけをしており、「県外の学校でも実現したい」と語った。