異変…トトロの森、変色した木が広がる 急速に広範囲へ…害虫による「ナラ枯れ」深刻 今回ドローンで全国初の解析、衛星写真より高解像度で実態浮き彫りに 害虫阻止へ所沢市、1億円以上の費用かかった過去も
映画「となりのトトロ」の情景が広がる狭山丘陵「トトロの森」に異変が起きている。青々と茂った木々の中に、枯れて茶色に変色した木が広範囲に広がる。害虫「カシノナガキクイムシ」が原因の「ナラ枯れ」だ。年々拡大する被害の対策のため、所沢市は京都大学発のスタートアップ企業「ディープフォレスト・テクノロジーズ」などと16日に協定を締結し、ドローンで上空から状況を把握する実証実験を行った。
「結構ナラ枯れが進んでいる」。同社の大西信徳代表は険しい表情を浮かべた。17日、所沢市三ケ島2丁目の里山保全地域の上空をドローンがパソコンで定められた通りに飛行。戻った後、撮影した画像を同社が開発した解析システム「DFスキャナー」にかけ、枯れたナラを色分けすると、満遍なく広がっている状況が浮かび上がった。
協定は所沢市、ディープフォレストと両者をつないだNTT東日本の3者が締結した。NTT東日本によると、市販ソフトウエアを用いた枯死木調査の実証実験は全国初。
所沢市では2020年に近年では初めてナラ枯れを確認し、被害は20年の92本から2年間で1088本と急速に拡大した。枝の落下によるけがなど被害の波及を防ぐため、職員が一本一本確認しており伐採も含めて1億円以上の費用がかかっていた。
これまでは枯死した木は全て伐採していたが、本年度からは道路や民家の付近など人的被害の懸念があるものを伐採する新たな方針が作られた。市みどり自然課の加賀屋浩介課長は上空から撮影した写真を見て、「位置情報が分かるのは強い。人が入れないところまで分かる」と効率化に期待を示し、実証実験後も継続的な事業化を検討するとした。
DFスキャナーを用いると、ナラ枯れの本数や大きさが分かり、伐採の費用の積算が可能になる。大西代表は「衛星写真の約15倍の解像度で、木種の識別ができる」と特徴を説明した。里山保全地域については「結構悪い状況。去年のナラ枯れの木は全て切っているということなので、今見えているのは今年になって広がったもの」と指摘し、「ナラ枯れのスピードは速い。枯れていない木を守るためにマッピングの作業が重要」と指摘した。