10月31日、蕨市の蕨郵便局に男が拳銃を持って女性局員2人を人質に約8時間立てこもった事件で、県警に人質強要処罰法違反の疑いで逮捕された無職の男（86）＝戸田市新曽＝が、説得に当たっていた捜査員に対し「ガソリンあるからな」と火を付ける趣旨の説明をしていたことが2日、捜査関係者への取材で分かった。県警は現場から複数の容器に入った液体やライター8本を押収。鉱物油の臭いがする液体も確認されていて、郵便局に放火する狙いもあったとみて調べている。

　県警は同日、男を人質強要処罰法違反と建造物侵入の容疑でさいたま地検に送検した。

　事件発生は31日午後2時15分ごろ。男が拳銃を持って立てこもった。局内には20代と30代の女性局員2人が取り残されていたが、午後7時17分に20代局員を解放。同9時4分には30代局員が男の隙を見て逃げ出した。同10時20分に県警の特殊班などが突入し、取り押さえた。

　捜査関係者によると、男は30代の局員が自ら逃げ、人質がいなくなった後、捜査員との電話のやりとりの中で「ガソリンあるからな」と火を付ける趣旨の発言をし、警察の突入をけん制していた。

　実弾が複数残っている拳銃1丁や複数の銃弾、包丁のような刃物2本のほか、現場からは10リットルと18リットルのポリタンクに入った液体、500ミリリットルのペットボトル2本に入った液体を押収。ポリタンクの液体は鉱物油の臭いが強く、可燃性の可能性が高い。ライターも8本見つかっていることから、郵便局に火を付ける意図もあったとみられる。県警が液体の鑑定を進めるとともに、詳しい経緯を捜査している。

　県警は2日、郵便局のほか男が拳銃を撃ち込んだとみられる戸田中央総合病院や火災が発生した男方のアパートを現場検証した。男は病院での発砲を自認。火災についても「自宅に放火した」と供述し、いずれの犯行も認めている。