ショック…部屋ぐちゃぐちゃ、引き出し全開で床散乱 知らぬ間にガラス割られ、誰かが好き放題 うっかり草木が伸びてしまった空き家、泥棒が急増中 郵便物、屋根、外壁もチェックする犯人 所有者の男性「犯人が仲間と情報共有し、また来るかも」
秩父地域で、空き家を狙った侵入窃盗が多発している。同地域を管轄する秩父署と小鹿野署の今年1~9月末の空き家窃盗認知件数は、前年同期を25件も上回る28件だった。屋根や外壁が劣化している、庭木が伸びている、郵便物がたまっているなど、適切に管理されていな空き家が標的にされており、県警はパトロール強化とともに、所有者らに空き家の維持管理の徹底を呼びかけている。
同期間の秩父署管内(吉田地区を除く秩父市と長瀞、皆野、横瀬町)の空き家の窃盗認知件数は21件で前年比18件増。小鹿野署管内(秩父市吉田地区と小鹿野町)は7件で前年同期は未発生だった。ともに今年の春先以降に管内の広範囲で発生している。
■ガラス破り大半
両署によると、ガラスを破り窓などの鍵を開けて侵入する「ガラス破り」の手口が大半を占める。無施錠による被害も出ている。これまでに、ネックレスなど貴金属類の盗難被害を数件確認しているが、月1回程度しか空き家を訪れない所有者もいて、「いつ空き巣に入られたのか」「何を盗まれたのか」認知できないケースも珍しくないという。
小鹿野町内に空き家を所有している自営業の力山浩巳さん(55)は、10月25日午前に訪れた際、空き巣被害に気が付いた。
窓ガラスの一部が割られ、破壊した部分から犯人が手を入れて鍵を開けたとみられる形跡が残されていた。1階の部屋の棚の引き出しは全て開けられ、物が床に散乱した状態だった。
力山さんはすぐに小鹿野署へ報告。同26日時点で盗難被害は確認されていないが、「見知らぬ者が侵入し、部屋を荒らされたことのショックは大きい」と悔しさをにじませる。これまで、月3回ほど家を訪れ、郵便物の回収や、玄関照明の点灯を積極的に行うなど、防犯対策を行っていた。
「今年は猛暑が続いたため、庭の手入れを怠っていた。玄関前まで草が伸びきっていたせいで、狙われたのかもしれない」と力山さんは推察する。空き家になってから10年以上たつが、侵入被害に遭ったのは今回が初めてという。
「地域住民たちの注意喚起になれば」と、力山さんは今回の取材に応じた。「家には金目の物は置かないようにしているが、今回の犯人が仲間と情報を共有し、家具などを狙って再び侵入してくる恐れがある。今まで以上に頻繁に足を運ぶようにしたい」と話す。
■空き家率高く
県警は、雑草の小まめな除去や、郵便物の小まめな回収、窓や扉の確実な施錠など、空き家を空き家に見せないための、適切な維持・管理を所有者らに求めている。
小鹿野署の茂木克弥・生活安全課長は「空き家所有者には、定期的な維持管理をお願いするとともに、『空き家バンク』などの管理サービスの利用や、土地の有効活用を勧めていく」という。
総務省の住宅・土地統計調査によると、県内の総住宅約338万4700戸のうち、居住世帯のない住宅は、2018年時点で36万1500戸(総住宅数の10・7%)。空き家率は秩父市の19・6%(県内1位)をはじめ、県北部、西部を中心に高い傾向にある。