家出猫、10年ぶりの帰宅…深谷のナナちゃん、波乱万丈の“猫生” 現在はお散歩と“伝書猫”楽しむ日々送る
2011年暮れに「家出」をした猫が約10年の年月を経て、飼い主の元に帰ってきた。名前は「ナナ」。雌の三毛猫で、後から来た雄猫「タービー」と相性が悪く、別の家で暮らしていた。人間に換算した年齢は90歳から100歳ぐらいのおばあちゃん猫は散歩を楽しみ、近所の人たちからもかわいがられ、近くの家に手紙も届けている。
飼い主は、深谷市上柴町西4丁目で衣料雑貨店「パークサイド國松」を営む國松繁樹さん(78)と妻るみ子さん(74)。隣が上柴中央公園で、05年7月7日に園内にいた生後4カ月ほどの猫を保護し、ナナと名付けた。國松家で飼っていた犬2匹と猫1匹と一緒の生活がスタートした。ナナは人が大好きで、公園の東屋に遊びに行っては利用者らからかわいがられた。
■天敵にいじめられ
4年後、ナナの天敵となる「タービー」を保護し、國松家は犬2匹、猫4匹の大所帯になった。るみ子さんのベッドで寝ていたナナはタービーとベッドを取り合い、いじめられるようになったという。夜になると姿が見えなくなる日もあり、繁樹さんが自転車で捜し回る日も多々あった。とうとうナナは11年暮れ、國松家から姿を消した。
数カ月後、心配していた國松夫妻に店の利用者から「家の近くにナナちゃんと似ている猫がいる」と情報が寄せられ、元気な姿を確認して安心した。ナナは國松家から南に約200メートル離れた猫好きの家で新しい生活を送っていたという。
2、3年後、繁樹さんが何かを訴えているようなナナと出合った。それからナナは3カ月に1度ほど、店に顔を出すようになった。しかし店にいる時間はいつも1分いるか、いないか。「もっと遊んでいけば」と声をかけても、すぐに帰ってしまう。何回来ても同じ行動の繰り返しだった。そのうち、タービーの臭いが嫌いで、店から出ていくことが分かったという。「本当は帰ってきたかったはずなのに」と繁樹さん。
■ドアを「開けて」
時は流れ、21年4月6日にタービーが旅立った。それからひと月が過ぎた5月16日の午前、久しぶりにナナが遊びに来た。店に入った瞬間、いつもと行動が違う。店と自宅を仕切るドアを「開けて」と言っているようなしぐさをした。1階リビングなど隅々まで臭いをかいだ。2階に行っても全ての部屋の臭いをかぎ、押し入れの中も確認するなどあらゆる場所の臭いをかいだ。
ナナの行動を心配する夫妻。その日の夕方、またナナがやって来た。午前中と同じ行動をした。落ち着いたのか2階で毛づくろいを始め、繁樹さんのベッドに飛び乗り、リラックスして寝てしまったという。繁樹さんは10年ぶりにナナをしみじみと見続け、「帰ってきたかったのか」とそっと声をかけた。
翌日朝になってもナナは布団の上にいた。約10年間ナナを世話していた飼い主も理解してくれて、ナナは再び國松家で暮らし始めた。
■毎朝、手紙を届けに
繁樹さんが公園内で保護した数は犬1匹、猫10匹になり、結婚後は犬5匹、猫15匹を家族で見送ってきた。
現在、國松家のペットはナナだけだ。毎朝、午前6~7時になるとナナは、約30メートル離れた別の猫好きの夫妻の家に遊びに出かけていく。繁樹さんが前日のナナの様子などを書いた手紙を首輪に付けて。手紙を受け取った夫妻もネームプレートにシールを張る。それを持ってナナが國松家に帰ってくる。