お彼岸の来園者減少、代行供養のサービス利用急増 お盆も例年と違う儀式方法に【#コロナとどう暮らす】
新型コロナウイルス感染防止のための外出自粛や生活様式の変化によって、法事や法要の様相が変容している。県内の霊園では、お彼岸の3月から来園者が減少し、代行供養のサービス利用者が急増。霊園関係者は、8月のお盆も来園者が少ないと予測し、代行サービスの人員体制を強化している。寺で行われる盆供養も、例年とは違う儀式方法に。住職は「家庭の大切なご先祖様を供養する場は守っていきたい」と、安全優先の運営を掲げる。
■代行供養の需要急増
嵐山町の霊園「武蔵メモリアルパーク」では、墓石の清掃、献花、礼拝などを墓地使用者に代わって行う、代行供養サービスの利用者が急増している。今年3~6月末までのサービス依頼は26件で、前年の3倍以上。「外出自粛でお参りを控えたい」という遠方者や高齢者の問い合わせが多かった。8月の予約もすでに数件入り、外部の作業員と連携しながら業務を進めていく。
同霊園の西田保所長(54)は「コロナ禍が続く限り、代行供養の依頼は増え、県外からの来園者は減っていくだろう」と予測する。
墓地契約者約5800人のうち、約2千人は都内に居住している。「東京盆」と呼ばれる7月13~16日の来園者は前年130人だったが、今年は10分の1程度に落ち込んだ。
西田所長は、8月13~16日のお盆に関しても、前年同期の153人より大幅に減少すると見越している。その理由の一つに、政府が旅行を推進する「Go To トラベル」キャンペーンで、東京都が除外されたことを挙げる。
「8月のお盆休みは、家族で旅行や帰省をした帰りに霊園に寄って、お参りをするケースが多い。東京の人が遠方の外出を断念することで、墓参りに行く機会も失われてしまう」と懸念する。
多くの来園が見込まれる8月のお盆期は毎年、同霊園の最寄り駅である東武東上線「武蔵嵐山駅」から臨時送迎バスを運行させているが、今年は社用のマイクロバスで対応する。管理棟などの施設内は、飛沫(ひまつ)防止シートやテーブル席数を減らすなど、安全対策を徹底する。
西田所長は「今年はお参りに来られない方も多いと思うが、年1回でも、ご先祖様を直接供養し、自身の心を清らかにしてほしい。施設内の対策は万全なので、安心して来てもらいたい」と話す。
さいたま市南区の宝性寺では、毎年8月のお盆に住職らが檀家宅へ訪問して読経する「棚経(たなぎょう)」を行っているが、今年は中止にした。代わりに同寺の本堂で法要を行い、来訪者が盆供養のお経の軸を自宅に持ち帰り、棚経壇にまつって供養してもらう方法を取り入れる。
本堂内は、席の間隔を空けるなど安全対策を徹底。8月13~15日に午前7時~午後5時、1時間置きに法要を行う(15日は午前中のみ)。
宝性寺の相川孝※(たかみち)住職(75)は「今年のお盆供養は、特別処置での案内が多くなってしまうが、各ご家庭の大切なご先祖様を供養する場は守っていきたい」と話していた。
※は、経の異体字