泣く5歳死亡…就寝のあいさつなく「ばかにしている」女が母に暴行するよう促し「バン」笑う男 法廷で音声公開、女「私は手を出していない」 投げ飛ばされ死亡する2日前、何度も暴行の音…女が罵声「さん、にー、いち」「ファイトーファイトー」
本庄市の住宅で昨年1月、当時5歳の男児を暴行して死亡させ、遺体を床下に遺棄したなどとして、傷害致死や死体遺棄などの罪に問われた同居人の女(56)の裁判員裁判の初公判が8日、さいたま地裁(北村和裁判長)で開かれた。女は傷害致死罪について「私は一切手を出していない」などと起訴内容を否認し、他の罪については認めた。死亡するきっかけとなったとされる昨年1月18日の男らによる男児の投げ飛ばし暴行について、指示していたとされる女の共謀が成立するかが争点になる。
冒頭陳述で検察側は、女と内縁の男(36)=傷害致死罪などで懲役12年、控訴=の住宅に、男児と母親(32)=同罪などで懲役10年、控訴=が移り住み始めた2021年1月ごろから、しつけと称して女らによる男児への暴行が始まったとして、「常習的な犯行で悪質性が高い」と主張。母親らに暴行を指示していたとして、女自身が実際に暴行をしていなかったとしても、その意思を共有していれば傷害致死罪の責任を負うとした。
弁護側は、同居する前に聞いていた男児の性格を直すために「言うことを聞かなければたたいてでも聞かせないといけないと思っていた」と暴行の理由を説明。昨年1月18日の男らによる男児の投げ飛ばし暴行については「突然のことで、止める間もなかった」と主張した。また、事件当時は母親らに頼られていたことなどによるストレスで「普通ではない精神状態だった」とした。
判決は24日に言い渡される。
起訴状などによると、女は母親、男と共謀の上、昨年1月18日、本庄市の住宅で母親の長男=当時(5)=を投げ倒すなどの暴行を加えて死亡させた上で、翌19日、住宅の床下に穴を掘り遺体を埋めて遺棄。また、同居の高齢女性が亡くなったことを隠して、17年12月から昨年2月15日までの間、複数回にわたり老齢基礎年金など計約1154万円をだまし取ったなどとされる。
■「やった方がいいよ」音声公開
冒頭陳述後に行われた証拠調べで、検察側は事件が起きた住宅に設置されていたカメラが収録していた、女らと男児の会話の様子を収録した音声データを公開した。
音声は男児が亡くなる2日前の夜、男児が就寝時のあいさつを言わなかったことをとがめた女と母親、男が詰め寄る場面。女が「相撲の時間かな」「確信犯だからね、やった方がいいよ」と母親に暴行を促し、男が同調する発言をすると、その直後に「バン」という鈍い音が響き男児が泣き声を上げた。女は「さん、にー、いち」と音頭を取り、男児が暴行されたような音が断続的に響くと「ファイトー、ファイトー」などと言いながら声を上げ笑った。
その後も男児に「なんでしゃべらないの?」「ばかにしている」などと罵声を浴びせた女の声。萎縮しているのか、小さな声で話す男児を男とあざ笑うような場面もあった。法廷内に一連の音声が流れると、女は落ち着いた表情を変えることなく聞き入っていた。