埼玉新聞

 

県内初の快慶作の仏像か…熊谷・東善寺の阿弥陀如来立像、市が背景解明へ 年代や大きさなど謎多く

  • 鎌倉時代の仏師快慶作の可能性が高い東善寺所有の木造阿弥陀如来立像(熊谷市提供)

  • 木造阿弥陀如来立像のX線CT画像。内部に古文書らしきものが入っている(熊谷市提供・撮影東京国立博物館)

 熊谷市は25日、同市代の東善寺が所有する木造阿弥陀如来立像を調査した結果、鎌倉時代を代表する仏師快慶作の可能性が高いと発表した。快慶が手掛けた仏像の多くは国宝や重要文化財に指定されている。市によると、関東では栃木県で2件3体、確認されているが、県内では初めて。県立歴史と民族の博物館(さいたま市大宮区)で3月16日~5月6日に開かれる特別展「東国の地獄極楽」で公開される。

■内部に古文書らしきものも

 仏像は高さ69センチ。鼻先や左手が欠損し、表面に剥落がみられるものの、ほぼ完全な形だった。材質は針葉樹。1本の丸太を彫り、内部をくり抜く古い技法で造られている。X線CT(コンピューター断層撮影)で内部を調べたところ、折り畳んだ古文書らしきもの(長さ36センチ、幅6・6センチ、奥行き4センチ)が入っていることが判明した。

 市は市史編さんのため、2012年度から市内の寺院などが所蔵する仏像の調査を実施。17年11月に東善寺で、本堂奥の棚に本尊とは別の特徴的な仏像が安置されているのを確認した。東京国立博物館に調査を依頼した結果、快慶研究の第一人者である清泉女子大の山本勉教授から「快慶の作品にある特徴が複数みられる」との所見を得た。

 調査に当たった元県立博物館館長で同市の市史編さん委員会仏像・仏画専門部会の林宏一さん(74)は「女性的で繊細かつシャープな表情、衣のしわなどの表現」を特徴に挙げ、「関東では発見例が少なく、彫刻史を研究する上で大変重要」と指摘する。

 ただ、謎も多い。林さんによると、快慶の阿弥陀像はこれまで14体見つかっているが、いずれも3尺(80~90センチ)程度と大きさが異なる。東善寺の開山時期も、快慶の活動時期から約400年経過した1600年前後と伝えられており、年代が合わない。仏像が安置された経緯も不明だ。

 市社会教育課は「今後、仏像の解体修理を検討し、作者や背景を解明していきたい」としている。

■快慶

 運慶と並ぶ鎌倉時代を代表する仏師。生没年不詳。運慶の父康慶の弟子といわれる。代表作は建仁3(1203)年に運慶らと合作した国宝「東大寺南大門仁王像」など。写実を重視した優美な作風は「安阿弥様(あんなみよう)」と称され、後世の仏像彫刻に大きな影響を与えた。

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