埼玉新聞

 

「執拗で悪質極まりない」 本庄の5歳暴行死、同居の女に懲役13年判決 暴行の主導、「傷害致死」を認定

  • 【裁判所】さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂

    さいたま地裁=埼玉県さいたま市浦和区高砂

  • 【裁判所】さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂

 埼玉県本庄市の住宅で昨年1月、当時5歳の男児を暴行して死亡させ、遺体を床下に遺棄したなどとして、傷害致死や死体遺棄などの罪に問われた同居人の石井陽子被告(56)の裁判員裁判の判決公判が24日、さいたま地裁で開かれた。北村和裁判長は、男児の母親らとの共謀を認め傷害致死罪が成立すると認定。一連の暴行について「執拗(しつよう)で悪質極まりない」などとして懲役13年(求刑・同15年)を言い渡した。

 北村裁判長は判決理由で、石井被告と内縁の丹羽洋樹被告(36)=傷害致死罪などで懲役12年、控訴=と、母親の柿本知香被告(32)=同罪などで懲役10年、控訴=による男児が死亡したきっかけとなった暴行について、石井被告が相撲をしたらどうかと言って促したと指摘。2人と「(暴行の)意思を相通じていた」とした。

 一連の犯行についても、「(石井被告の)言動や存在が不可欠の要素だった」として3人の中でも主導的立場だったと強調。「反省の弁は述べているものの、不合理な弁解に終始して、自らの責任に真に向き合っているとは言い難い」と断じた。

 弁護側は、それまで石井被告はけがをしないよう暴行の指示にも配慮しており、男児が死亡するきっかけとなった暴行に関しては指示を否定した上で、「全く予想することができなかった」と主張。さらに当時は丹羽被告の浮気などにより疲弊し「普通の精神状態ではなかった」として、傷害致死罪は成立しないと強調していた。

 閉廷後、弁護人は記者団に対して石井被告の控訴について「今後打ち合わせをして検討する」とした。

 判決によると、石井被告は柿本被告と丹羽被告と共謀の上、昨年1月18日、本庄市内の住宅内で柿本被告の長男=当時(5)=に投げ倒すなどの暴行を加えて死亡させた上、翌19日、住宅の床下に穴を掘り遺体を埋めて遺棄。また、同居の高齢女性が亡くなったことを隠して、17年12月から昨年2月15日までの間、複数回にわたり老齢基礎年金など計約1154万円をだまし取った。

視線落としうなずく

 石井被告はこの日、赤とグレーのボーダー柄セーターに黒のズボン、腰ほどまで伸びた長髪を後ろで結び、目線を下に落としながら入廷。席に着くと、報道陣らで満席の傍聴席を一瞥(いちべつ)し、その後は再び視線を落とした。

 北村裁判長が主文を言い渡しても動じた様子は見せなかったが、判決理由の説明に移ると、時折うなずくしぐさを見せた。最後に内容を理解したかを問われると、力なく「はい」と返事をした。

 幼い子どもが犠牲となった事件は複雑な人間関係とともに、さまざまなメディアで取り上げられ、注目を集めた。開廷前の24日午後3時過ぎ、公判の結末を見届けようと、さいたま地裁には傍聴券を求めて50人が列をなした。

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