「極めて危険で無慈悲」 ふじみ野立てこもり、検察側が無期懲役を求刑 弁護側は殺意否認「懲役15年が相当」
昨年1月、埼玉県ふじみ野市の住宅で医師の男性=当時(44)=が散弾銃で射殺されるなど訪問していた医療関係者3人が死傷した立てこもり事件で、殺人や殺人未遂の罪などに問われた、住民の無職の男(68)の裁判員裁判の論告求刑公判が28日、さいたま地裁(小池健治裁判長)で開かれた。検察側は、「殺害完遂へ強固な意志がうかがえる」などとして無期懲役を求刑。弁護側は殺意を否定し、懲役15年が相当として結審した。判決は来月12日。
検察側は論告で、男が事件前日に実母の死に直面したことで医師らの対応に一方的に強い怒りと恨みを募らせたと主張。死亡した医師らに殺傷能力の高いスラッグ弾を1メートル前後の至近距離から重要な臓器が集中する上半身に向けて、ためらいなく発射した行為自体から殺意は明らかだとし「極めて危険で無慈悲な犯行」と強調した。
犯行は周到な計画を立てた上で2発撃った散弾銃を取り上げられたのにもかかわらず、別の銃で撃っていて「一人でも多くの人を殺害することに執着し、その意志を翻すことなく臨機応変に対応して犯行を継続した」と指摘。一方的な逆恨みから自殺の道連れに凶行を決意し「恩をあだで返す行為にほかならない。動機は理不尽で自己中心的だ」と非難した。
一方の弁護側は医師に母親の蘇生措置を断られたことで「家族の最後の願いも聞いてもらえず、頭に血が上って大けがさせてやろうと決意した」と改めて殺意を否定。医師らへの不満を記した直筆メモに「断じる」と書いたことについては「是非を問うという意味で殺してやろうと書いたものではない」と説明した。逮捕後に警察と検察の取り調べに殺意を認める供述をしていた点は、睡眠薬を大量に服用していたため、供述をした記憶がないとした。
最終意見陳述で男は「頭に血が上ったこととはいえ、先生やクリニックスタッフ、関係者の方々へ心から申し訳なく思い、猛省してます」とメモを読み上げた。
起訴状などによると、男は昨年1月27日、医師の胸部に散弾銃を発砲して心臓破裂で死亡させ、同じ散弾銃で理学療法士の男性=当時(41)=を撃って肝損傷などの重傷を負わせた。さらに、医療相談員の男性=当時(32)=に催涙スプレーを発射して傷害を負わせ、路上にいた医療相談員の男性=当時(42)=に別の散弾銃を撃って殺害しようとしたとされる。