子どもたちに弁当を無償提供 地域への思いで…春日部の飲食店7店が参加、子ども食堂が無料券を配布
新型コロナウイルス感染拡大により、地域で子ども食堂が開けない中、春日部市内の飲食店が協力し、子どもたちにテークアウトの弁当を無償で提供している。市内で子どもたちに食事の場を提供してきた「かすかべ子ども食堂ひなた」が定期的に「お弁当無料券」を配布。協力する各店舗で受け取る仕組みだ。協力店も和、洋、中華など7店が参加し、支援の輪が広がっている。
新型コロナ感染拡大を受け、親子が一堂に集まり、調理や食事をすることが難しくなったため、「ひなた」は月に1度、消毒液やお菓子を無料配布してきた。5月からは、市内飲食店と連携し、弁当を店舗で受け渡す取り組みを開始。8月までに、配布券を受け取る子どもは約100人に増えた。
コロナの影響や学校の予定が不規則な中、子どもの数が増えることは予測していたが、参加店舗が増えることは想定外だった。「ひなた」代表の猪狩氷青(いがり・ひょうせい)さんは「コロナで子どもたちに食事を提供できない中、飲食店の力を借り、安全に食を届けることができる。とてもありがたい」と話す。
「ひなた」が毎月、連絡先や受け付け日時を記した「お弁当無料券」を作成、子どもたちに配布する。無料券を受け取った子どもの親が事前に予約し、店に弁当を取りに出向く。利用できるのは子どもの分のみ、1店当たり1日に配布する食数を限定している。
店側も弁当の内容を工夫。賄いやおむすびなど、有料メニューと差別化を図っている。それでも飲食店がなぜ無料で弁当を配布するのか。参加店は地域に根付いた地元の飲食店ばかりで、金銭的な利害とは異なる地域への思いが子ども食堂を支えているようだ。
7月から参加している同市大枝のカフェレストラン「came came30(かめかめさんまる)」は、米ぬかふりかけのおむすびを提供している。7月は3件、8月は7件、子どもたちに弁当を提供した。「ひなた」の活動を知り、参加を申し出たという同店シェフの上野剛さん。「食を通じて、健康や農業、環境についてサポートしたいという思いと合致した」と参加した理由に触れた。子ども食堂の活動に興味があり、いずれは調理やレシピ提供にも協力したいと意欲を見せる。上野さんは「どの店も地域の子どもたちを支えたいという気持ちがあるのでは」と他店の心情を推し量った。
猪狩さんは「今後も協力店を増やしたい。コロナの時だからということではなく、日頃から飲食店とのネットワークを広げることができれば」と子ども食堂の新しい展開を模索している。