埼玉新聞

 

11階建てマンション火災、逃げ遅れた人は…施設の職員が建物内80戸を訪問、住民誘導 消防署が表彰

  • 木村広詞南消防署長(左)から表彰状を手渡されたグリーンビレッジ蕨の田村直樹さん(中央)と三居麻衣さん=28日午前、さいたま市南区

 さいたま市南消防署は28日、マンション火災を発見して初期消火を行い、住民を避難誘導したとして、介護老人保健施設「グリーンビレッジ蕨」(蕨市北町)に表彰状を贈呈した。同施設の田村直樹事務長(51)は10年以上前にも、同様の火災で消火に協力したことがあり、「逃げ遅れた人を助けたい一心で、とっさに体が反応した。いざという時に経験が生きた」と話す。

 同署によると、7月21日正午ごろ、南区辻7丁目の11階建てマンションで火災が発生。現場から約2~300メートル離れた同施設の職員が最初に黒煙を発見し、すぐさま田村さんと同僚の上田愛さん(31)が消火器2本を持参して現場へ駆け付けた。その間に三居麻衣さん(35)は消防へ通報した。

 到着すると、マンション管理人も火災を把握しておらず、高さ約80センチ程にまで、建物内から炎が上がっていたという。田村さんは急いで持参の消火器で、初期消火を実施。上田さんは、火災に気付かず逃げ遅れた人がいないか建物内80戸を一戸ずつ訪問し、避難を呼び掛けた。

 数分後には消防車が到着。初期消火を行ったため炎は燃え広がらず、けが人は出なかったという。

 田村さんは以前にも、別の火災で消火に協力した経験があった。現在は職場の防火管理者として消火器の操作方法など、毎年2回の訓練で職員に周知しているという。

 「炎を見て恐怖心どころか逃げ遅れた人を助けたい気持ちだけで、当たり前のことを行っただけ」と田村さん。表彰には「うれしいし大きな励みになる」と笑顔。三居さんは「これからもいざという時に備え、日頃の訓練を行っていきたい」と話している。

 木村広詞署長は「身の危険を顧みず、炎上中の建物で迅速かつ適切な初期消火や避難誘導に尽力したことは他の模範となる」とし、田村さんらの勇気ある行動に感謝を示した。

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