埼玉新聞

 

困惑…お客さんに「盗みですか?」と聞けない“買い取り業者”、阻止したい「金属泥棒」どこに 価格高騰で暗躍する犯人たち、マンホールなど大規模破壊…地中に埋めて鉄管でガードも、奪い取られるケーブル数百メートル「脅威だ」

  • 業者(中央)へ通報依頼や協力体制を呼びかける警察官=10月、羽生市須影の「ペルシャコーポレーション」

    業者(中央)へ通報依頼や協力体制を呼びかける警察官=10月、羽生市須影の「ペルシャコーポレーション」

  • 業者(中央)へ通報依頼や協力体制を呼びかける警察官=10月、羽生市須影の「ペルシャコーポレーション」

 県内で金属窃盗被害が相次いでいる。県警生活安全課によると、今年1~8月の金属窃盗の被害認知件数は昨年同期より124件増の427件と40・9%増加した。金属の価格高騰を背景とする転売目的とみられ、太陽光発電施設から銅線やケーブルが盗まれる被害も多発。盗まれた金属が金属くず買い取り業者に持ち込まれ、盗品と気付かずに買い取られてしまう怖れもある。県警各署では今夏から業者に対し、不正品の疑いを認めた場合の通報や買い取りの抑止を呼びかけるなど協力を要請している。

■一目では分からず

 「盗難品をお持ち込みの際は警察に通報します」―。10月、県警や県の担当者らは羽生署管内の金属くず買い取り業者9社を訪問し、注意を呼びかけながら啓発品を配布した。要請を受けた羽生市須影の「ペルシャコーポレーション」の入り口には犯罪抑止の文言が書かれたチラシなどが掲示された。

 同社を経営するギャレダール・ハッサンさんは「お客さんに対して直接『盗みですか?』とは聞けない。盗難品かどうかも一目では分からない」と明かす。同社では必ず運転免許証などの身分証明書を確認し、対策を講じてきた。ハッサンさんは「不審に感じたら情報提供し、通報します」と語った。

 県内では県北東部で被害が目立ち、羽生署管内は前年同期33件増の49件で県下最多。同署の松本和久署長は「買い取り業者の皆さんに呼びかけを行い、転売を抑止する動きは意義がある」と強調。その上で「業者の中には外国人の方もいる。言葉の壁なども時にはあるが、親切丁寧な説明をしていきたい」と述べた。

■対策をしても被害

 県内の金属窃盗の被害傾向では、銅線・ケーブルが最多の236件で、うち117件が太陽光発電施設で盗まれた。羽生市では今年、下村君地区の太陽光発電施設が1月と7月に銅線送電ケーブルを持ち去られた。1月は約390メートルの送電ケーブルだけでなく、マンホールなども破壊され、7月は約200メートルのケーブルが盗まれた。

 同発電所の被害は3年間で4度。市環境課によると、2020年と21年の被害を受けてケーブルを地中に埋設し、銅線も鉄管でガード。さらにマンホールも開けられないようにするなど対策を取っていたものの防げなかった。同課の担当者は「人力では犯行はできない。おそらく重機のようなものを使ったのでは」と推測する。

 同発電所では約206世帯分の電力が賄え、売電が順調だと約3千万円前後が市の収入となるという。被害を受け、新たに警備保障などを取り入れることになり、修繕費含め、市は約1703万円の予算を組んだ。来年1月中の復旧を目指し、担当者は「大規模な破壊行為に対処していきたい」と話す。

 「太陽光発電協会」(東京都)の増川武昭事務局長によると、太陽光発電所の被害は埼玉のほか、茨城や千葉でも多く見受けられるという。増川事務局長は「何とかして犯罪を減らしたい。生活に直結するので、脅威になる」と危惧している。
 

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