虐待死…雨の中、外に立たされた4歳児が 親逮捕 伊奈町職員すぐ虐待に気付くも認識甘く、上司も動かず
伊奈町で2017年12月、当時4歳の岩井心ちゃんが虐待を受けて死亡し、両親が今年3月に逮捕された事件で町の対応を調査する検証委員会は1日、報告書を公表した。町職員が心ちゃんの体の傷やあざなど虐待の兆候を把握しながら、「他機関との連携不足」などから事件を防げなかった問題点を指摘。再発防止策として、児童福祉の専門職の増員など七つを提言した。
報告書によると、16年7月、「雨の中、幼稚園児ぐらいの子どもが立っている」との住民からの通報を受けて町職員が訪問。家の敷地内の庭に心ちゃんがTシャツ1枚の状態で立っていた。この時点であざや傷などが確認されていたが、母親からの説明に納得して指導だけにとどまり、児童相談所や警察には連絡しなかった。
その後、17年8月までに町職員が3回、心ちゃんと母親に接触していたにもかかわらず、本来連携すべき機関への情報提供もしていなかった。職員はその都度、上司に相談や報告はしていたが、課内での検討内容や支援の決定、終結に至った経緯などについて記録はなく、担当者任せになっていた。
また、心ちゃんは保育所や幼稚園に在籍していなかったため、施設を通じての見守りが難しい状況だった。さらに14年度に県内全市町村で作成した「児童虐待防止マニュアル」についての認識も低く、活用できていなかった。
提言では、通報を受けた時点で虐待が疑われる全ケースを検討、管理し、他機関との情報共有や多方面からの支援を行う必要があるとしている。施設に属さない児童の見守りについては、健康診査や健康相談、予防接種などを通じて安全を確保。その際、民生委員などの協力を得るなど地域での見守りの仕組みを作ることが大切だとした。
さらに「児童虐待防止マニュアル」を活用して、リスクの度合いや家庭の評価など保護者や子どもの状況を的確に把握し、支援に当たる必要性を指摘している。
検証委は町要保護児童対策地域協議会実務者会議として行われた。県中央児童相談所や医師会伊奈支部、上尾警察署などで構成。今年5~7月にかけて計3回開かれた。座長を務めた小島健司・町健康福祉統括監は「町の体制が脆弱(ぜいじゃく)だったし、職員の認識も甘かった。連携不足が一番の問題。専門性と体制をともに強化していきたい」と話した。
両親は今年3月保護責任者遺棄致死容疑で逮捕、同罪で起訴されている。