埼玉新聞

 

ダースベイダーを捨てられた空き缶で製作 幸手の私塾でアート教育、子どもたちの創造力を引き出す試み

  • 金物店に展示された「学びっ人塾」の子どもたちのオブジェ=幸手市

 幸手市の商店街にある金物店の店先に並ぶ3体のオブジェ。市内の私塾「学びっ人塾」に通う子どもたちが、空き缶やペットボトルなどのごみを使って作り上げた作品だ。主宰する彫刻家の小林晃一さん(63)は、美術作品の制作や文章作成を通じて子どもたちの創造力を引き出す試みを続けている。「一つのテーマを探求しながら創作することで自分なりの答えを作り出せるようになる。新たな時代を生き抜く上で重要な力だ」と話す。

 不法投棄されたごみから何を考えるか-。金物店のオブジェを作った子どもたちは、道端に捨てられたごみを拾いながら自分なりの作品テーマを模索。「絶滅危惧種とごみ」「海洋ごみの問題」など自分自身との関係性も踏まえ、製作した。

 スターウォーズが好きな中山心丈君(11)は「宇宙ごみの問題」をテーマにした。拾い集めた空き缶やバケツ、ペットボトルなどを使ってダースベイダーを製作。並行して、宇宙ごみの増加による地球への影響や現状解決の方策を調べ、「分別や清掃活動を行い地上のごみを減らすことで、宇宙のごみ問題も考えていきたい」と文章にもまとめた。「得意なパソコンを使って問題点を調べ解決法を考えた。好きなことを探求しながらの創作活動は楽しい」と語る。

 小林さんは彫刻家としての活動の傍ら、公立中学校で美術教諭を9年間務めた。現場での指導で痛感したのは「子どもたちの創造力の欠如」だった。

 体験を重視したアート教育を手掛けたいと2003年に「学びっ人塾」を開設し、実践的な表現の場づくりに取り組んできた。現在は小学2年~中学2年の10人が学んでいる。

 街中に美術作品を展示し地域とアートのあり方を考える17年の「幸手アートさんぽ展」では、プロの画家や造形作家らとのコラボレーション展示に挑戦した。「創作活動を間近で見せることで、子どもたちの創造力を引き出すことにつながった」と小林さん。金物店でのオブジェの展示は、この時の人脈が生きたことで実現につながったという。

 今年夏から幸手駅に開設した改札口ギャラリーで10月から2カ月間、学びっ人塾に通う子どもたちの作品展示も予定している。水彩画を出品予定の小林葉瑠さん(14)は「空をテーマにした創作活動を4カ月間続けた。「自分なりの描き方を見つけることができた。大作にも挑戦したい」と意欲を見せる。

 「アートは答えを見いだしていく力になる」。小林さんは大人にも、創造力を培うことを勧めている。

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