<熊谷6人殺害>ばかばかしい…妻子殺害された男性、無期懲役確定に悔しさ「ああ、終わっちゃったんだな」
最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は、熊谷市で2015年、小学生2人を含む住民6人を殺害したとして強盗殺人などの罪に問われたペルー人、ナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(35)の上告を棄却する決定をした。9日付。一審の死刑判決を破棄し、心神耗弱を認めて無期懲役とした二審東京高裁判決が確定する。
妻子3人を失った遺族の男性(47)が10日、埼玉新聞の取材に応じ、「悔しさしか残らない。今、聞いたばかりで整理できない。悔しい」と言葉を絞り出した。
男性は事件で、妻の加藤美和子さん(41)、長女美咲さん(10)、次女春花さん(7)=いずれも当時=を亡くした。自分以外の家族を失い、3人に対しても「死刑判決まで持っていけなかった後悔がある」とこぼす。
改めて一審さいたま地裁の死刑を破棄した二審東京高裁判決については、「信じられない。裁判官も、検察官も。まだ納得できない。ばかばかしい感情もある。検察官はなぜ上告してくれなかったのか。少しでも望みがあるなら裁判をやり直してほしかった」と訴える。
日本の司法手続きについても、「上告の権利を被害者に与えてほしい。二審も書面中心の審理ではなく、一審と同じようにやってほしかった」と指摘。さらに、「もうちょっと被害者が意見できる場をつくってほしい。判決を見て、大事なことが書いていないと思った。そういうことを裁判官に質問できるようにしてほしい」と求める。
二審判決は、事件当時のナカダ被告が心神耗弱だったと認定した。この点については、「少なからず殺人を犯す人はまともな状態ではない。そのときの精神状態は関係ないと思う」と主張。一審中には被告が「人を殺した」と口走る場面もあり、「殺人を犯した自覚はあると思う。どこがどう心神耗弱だったのか分からない。精神的な部分で争うことがおかしいのではないか」と考える。
今月で事件からちょうど5年になる。16日は家族3人の命日だ。男性は「今は何も考えられない。ああ、終わっちゃったんだなというがくぜんとした気持ちと脱力感がある。今後のことはこれから考えたい」と無念の心境を語った。