医師即死…母他界しショックの息子発砲「殺意ない」 事前に「強い弾が発射できるか」と銃砲店に確認、明らかに殺意あり息子に無期懲役 発砲直前まで母の介護をねぎらった医師、撃たれ心臓破裂
ふじみ野市の住宅で昨年1月、医師=当時(44)=が散弾銃で射殺されるなど訪問していた医療関係者3人が死傷した立てこもり事件で、殺人や殺人未遂の罪などに問われた、住民の無職渡辺宏被告(68)の裁判員裁判の判決公判が12日、さいたま地裁で開かれた。小池健治裁判長は発砲の際に殺意があったことを認定した上で、「強固な殺意に基づく冷酷な犯行」として検察側の求刑通り、無期懲役を言い渡した。
公判の争点となっていた殺意の有無について、小池裁判長は渡辺被告が母親の死に一方的な不満を募らせ、犯行当日に医師らを「断じる」と非難した直筆メモを作成した点や、銃砲店に散弾銃で強い弾が発射できるかを問い合わせした後に散弾銃2丁と弾丸を準備した点に加えて、銃身の角度や至近距離から撃った犯行態様、現場の状況などから「いずれも殺意があったことは明らか」と殺人、殺人未遂罪は成立するとした。
その上で量刑理由で、小池裁判長は「母親の死で大きな衝撃や喪失感があったことを考慮しても、銃器を使って殺害したことは理不尽で、厳しい非難に値する」と指摘。患者や家族に寄り添う在宅医療を実践し、被告に対しても発砲直前まで介護をねぎらう言葉をかけていた医師の胸部を撃って即死させたことに関して「自らが診療に関わっていた患者の家族の凶弾で殺されたことへの無念さは察するに余りある」と強調した。
弁護側は医師に母親の蘇生措置を断られことで「頭に血が上り大けがさせようと決意した」などと説明。他の2件の殺人未遂罪についても誤射や威嚇射撃とし、いずれも殺意はなかったとして懲役15年が相当と主張していた。
判決によると、渡辺被告は2022年1月27日、医師の胸部に散弾銃を発砲して心臓破裂で死亡させ、同じ散弾銃で理学療法士の男性=当時(41)=の右側腹部を撃って、肝損傷などの重傷を負わせた。さらに、医療相談員の男性=当時(32)=の顔に催涙スプレーを発射して傷害を負わせ、路上にいた医療相談員の男性=当時(42)=に別の散弾銃を放ち、殺害しようとした。
犯行後、医師を人質に約11時間、自宅に立てこもった末、翌朝に突入した県警の捜査員に身柄を確保された。