埼玉新聞

 

無許可堆積の土砂崩落、秩父の川に流入…関係の経営者ら除去作業に着手せず 県、行政代執行を開始

  • 県の行政代執行によって土砂の除去作業を開始した工事関係者たち=18日午前10時5分ごろ、秩父市田村

 秩父市田村で無許可に堆積された土砂が崩落して蒔田川に流入した問題で、県は18日、行政代執行による土砂の除去作業を開始した。県は他者の土地にも土砂を堆積していた業者らに土砂の除去を命じていたが、従わなかった。台風シーズンを迎え、洪水の危険や堆積地の再崩落の可能性があり、県が代執行を決めた。

 県によると、7月25日午前11時ごろ、崩落した土砂が約180メートルにわたり蒔田川に流入。蒔田川がせき止められ、周辺の田畑にも浸水被害が生じた。県は8月に土砂の堆積に関係した3社と経営者ら4人に対し、土砂の除去を命じる措置命令を行ったが、期限までに着手されなかった。

 県産業廃棄物指導課の山井毅課長が行政代執行の開始を宣言し、工事関係者が看板の設置作業などを行った。蒔田川周辺や土砂堆積地の土砂を除去し、土砂の再流出を防止する措置を実施する。期間は2021年3月31日までで、除去土砂量は約1万立方メートル。費用は約1・5億円で、県が3社と個人4人に請求し、今後は告発も含めて検討している。

 地域住民たちも工事着工の様子を見守った。現場付近に住む女性(89)は「最初に崩れた時よりも崩れている気がして心配だったけど、工事が始まってほっとした」と安堵(あんど)した様子だった。

 県は8月31日に土砂を堆積した男性に措置命令について説明しようとしたところ、県職員に暴行を加えたため、男性は公務執行妨害容疑で現行犯逮捕されたが、今月2日に釈放された。男性は2013年に県が許可した9倍近い土砂を堆積したとして、県土砂条例違反容疑で書類送検されたが、14年には不起訴処分となっている。

 業者側は「土砂の堆積は行っておらず、崩落は豪雨によって引き起こされた災害」などと主張しているという。山井課長は「事業者が対応しなかったことは残念。速やかな工事をして地元の人が安心できるような状況に早く戻せれば」と話した。

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