加藤登紀子さん、大宮でコンサート 児童虐待被害者らと合唱 愛情受け「温かい時間」
シンガーソングライター加藤登紀子さんのコンサートが22日、さいたま市大宮区で開催された。児童虐待被害者らと加藤さんがステージ上で、「この手に抱きしめたい」「琵琶湖周航の歌」の2曲を合唱した。参加した当事者は「登紀子さんと同じ舞台に立って歌えたことは本当にうれしい。愛情が伝わり、とても温かい時間だった」と話した。
「この手に―」は加藤さんがコロナ禍に作詞作曲し、児童虐待被害の当事者が出演したドキュメンタリー映画「REALVOICE」(リアルボイス)のエンディングに使用されている。コンサートでは、加藤さんが歌の意味と映画の内容を観客に説明。映画に出演した当事者ら13人、「みな風地域食堂」(中央区)のボランティアら58人と一緒に並んで力強く合唱した。
映画を監督した山本昌子さん(30)は、今月27日に80歳の誕生日を迎える加藤さんに大きな花束を手渡した。加藤さんから「一人じゃないよ」と励まされてきたという。「登紀子さんの母親のような深い愛情ある歌声」に感動し、楽曲提供を要請した。加藤さんから無償提供を受け、映画のPRにも協力してもらっている。山本さんは「本当にありがたい。歌はもちろんトークに、お人柄が出ている。親の存在がない私たちにとって、親のような感覚で、とても温かい時間だった」と話した。
児童養護施設の退所者らを支援する一般社団法人「コンパスナビ」(浦和区)事務局長のブローハン聡さん(31)も、当事者として映画に出演している。施設の課題を発信しており、「登紀子さんから『力になる』と言われ、すごく心強い」。音楽活動をしていることから、「登紀子さんの歌は国境を超えている。一緒に歌えて光栄。パワー、エネルギーをもらえて、もっと頑張ろうと思った」と語った。
みな風地域食堂の参加者は合唱に感動して、涙を流す人もいたという。代表の山田ちづ子さん(74)は「練習を重ねた効果が出た。とっても良かった」と話していた。
「加藤登紀子ほろ酔いコンサート」は半世紀以上の歴史があり、今回初めて県内で開催された。加藤さんは「百万本のバラ」「知床旅情」「難破船」「IMAGINE」など、アンコールを含め24曲を熱唱した。