相談、通報件数高止まり…高齢者虐待“家族から”が増加 認定された虐待件数は608件 相談、通報は1913件
埼玉県は、2022年度に県内の市町村に寄せられた家族など養護者による高齢者虐待の通報、相談件数が前年度比115件増の1913件だったと発表した。うち、市町村が認定した虐待の件数は67件増の608件だった。
一方、老人ホームなど養介護施設の職員らによる虐待の通報、相談件数は前年度比2件減の232件。県地域包括ケア課は「相談や通報の件数は高止まりの状況。県などの啓発活動により社会的関心が高まり、対応の必要性が広まっている」との見方を示した。
県は高齢者虐待防止法の規定に基づき、毎年、対応状況を公表している。養護者では、虐待をした人(重複あり)は息子が最も多く43・1%で、娘(20・2%)、夫(19・5%)の順だった。
虐待の種別(重複あり)では、身体的虐待が最多の470件(74・7%)。心理的虐待は183件(29・1%)、介護・世話の放棄・放任は102件(16・2%)、経済的虐待は83件(13・2%)、性的虐待は1件(0・2%)だった。相談、通報者は警察が最も多く4割、次に介護支援専門員・介護保険事業所職員が2割を占めた。
一方、施設での虐待と市町村が認定したものは前年度比11件減の78件。身体的虐待は54件、心理的虐待は30件、経済的虐待は15件、介護・世話の放棄・放任は12件、性的虐待は4件だった。
市町村では、養護者による虐待の場合は虐待を受けた人の一時的な施設入所や介護サービスの利用を促し、施設での虐待では指導や改善計画を提出させるなどの対応を行ったという。
飯能市の特別養護老人ホームでは今年5月、職員が入所者を蹴り死亡させる事件が起きていた。県地域包括ケア課は「介護をする人が感情のコントロールをできなくなり、身体的暴力に及ぶ場合が多い。車いすから降りないようにベルトで固定したり、適切な手続きなくミトン形の手袋を着用させることも『不当な拘束』で虐待に当たる」と説明した。
県は虐待ゼロを目指し、高齢者虐待対応専門員の養成や、県虐待通報ダイヤル「#7171」開設などの取り組みを行っている。