学びたい人たちに寄り添い続ける…川口の自主夜間中学が35周年 卒業した生徒ら、苦労や学ぶ喜び語る
川口市で市民団体が運営する自主夜間中学が開校から今年で35年を迎え、同市の施設で3日、ボランティアのスタッフや生徒、卒業生ら約40人による集会が開かれた。「川口自主夜間中学」の遠藤芳男代表(70)は、新型コロナウイルスで長期の休講を強いられた窮状を紹介。「コロナの収束は見通せないが、学びたい人たちに引き続き寄り添う」と意気込みを語った。
川口市には昨春、埼玉県で初めての公立夜間中の芝西中陽春分校も開校。「埼玉に夜間中学を作る会」の野川義秋代表(72)は「公立夜間中の設立は私たちが求めていたことだが長い時間がかかった。病気で亡くなるなど学びたい思いを抱えたまま世を去った人は多い。うれしさと悔しさが交錯している」と話した。
■卒業生「友人もできた」
「川口自主夜間中学」の35周年集会では、卒業した国内外の生徒たちがこれまでの苦労や学ぶ喜びを語った。
堀川しず子さん(87)は自主夜間中学を卒業し、現在は陽春分校の2年生。「戦争で行けなかった中学校生活をもう一度体験したい」と最高齢者として陽春分校に入学した堀川さんは、生徒に外国人の生徒が多いことから「歴史は日本の歴史を学ぶが、外国の人が自分の国の歴史をどう学んだのかも知りたい。学ぶためにもっと時間が欲しい」と話した。
前日は陽春分校の運動会で、パキスタン人の女子生徒3人がピンクのスカーフをなびかせて走るのを見て、「遠い日本の川口で『3人がどんな思いで走っているのか』と思って眺めた」という。
6年前に来日し自主夜間中学に通い、今は駅近くのショッピングセンターで働いている中国出身の鄭銘麗さん(41)も「日本語をもっと勉強したい。友達も欲しかった」と陽春分校に入学している。
「仕事は午後3時まで、保育園で子を迎え、5時半から陽春分校へ。いつも遅刻。私が学校へ行っている間は小5の長女が下の2人の世話を焼く。コロナで小学校が休校の時は仕事を休みました」
「先生は優しく、詳しく教えてくれる。友達もできた。自主夜間中の皆さんも陽春分校に入りましょう」と、自主夜間中にエールを送った。
「漢字を学びたい」と自主夜間中学に通うイラン人のヘイダリ・モルドさんはイラクとの戦禍を逃れて28年前に来日。「生まれた娘は学校でいじめられ、仕事を休んでよく学校へ行った」という。だが娘のニケライベッヘナーゼさん(21)は無事育ち、今は大学で独文学を学ぶ。「母に付き添って自主夜間中に通い、ドイツ人の友人もでき、来年はドイツに留学します。私の全てはこの自主夜中間で始まった。感謝したい」と語った。
自主夜間中学の運営母体の「埼玉に夜間中学を作る会」の野川義秋代表は「学びを求める人のために、さいたま市に2校目の開校を目指して活動を続ける」と決意表明した。
自主夜間中学の遠藤芳男代表は「国籍や年齢を問わず、いつでも誰でも学び直しができる。それが自主夜間中。その人たちの後ろからそっと寄り添い続ける」と話していた。