埼玉新聞

 

<埼玉西武だより>ファームの食事は1軍で活躍するため 西川も実感、“食”が与える野球への影響

  • 西川愛也(右)に食事のアドバイスをする管理栄養士の葛西真弓さん(球団提供)

 とある日の午前9時。1台のキッチンカーが、ロッテ浦和球場に到着した。すると、すぐさま発電機を発動させたスタッフが冷蔵庫から食材を取り出し、調理を始めた。

 このキッチンカーは、埼玉西武が今年から取り入れたもの。ファームが戸田、浦和、ジャイアンツ球場で試合を行う時に稼働する。試合前、選手やチームスタッフに対して豚肉のショウガ焼き、グリルチキンなどの主菜、フルーツ、サラダ、おにぎりなどさまざまなメニューを提供。まさに「埼玉西武オリジナル」仕様だ。

 球団は昨年5月、帝京大と業務委託契約を締結。管理栄養士が1軍とファームにそれぞれ1人ずつ帯同している。

 ファームを担当する葛西真弓さん(帝京大スポーツ医科学センター助教)は「これまでファームでは遠征先での昼食はお弁当がメイン。自分のコンディションに合わせて、食事を選択する余地がありませんでした」と振り返る。

 若い選手たちには、しっかりと食事を取ってエネルギーを補給させる必要があったが、それを実現するためのキッチンカーの稼働までには、さまざまな苦労があった。

 葛西さんは「食材は、クーラーボックスに保冷剤を入れれば時間がたっても衛生的に大丈夫なのかなど、安全面を調べるために実験も繰り返し行いました。ビジターゲームは食事時間が短く、素早く提供するためのシミュレーションも何度もしました」と力を込める。

 予定より約3カ月遅れたが無事にイースタン・リーグも開幕し、本稼働し始めたキッチンカー。その中で夏場に体重が落ちやすかった西川愛也(花咲徳栄高出)は「試合中も補食ができるようになりました。体重が落ちないから、打撃フォームに影響が出ないんです」と"食"が与える野球への影響を実感する。

 西川は暑さが一番厳しい8月13日に1軍昇格。初めて立った1軍の舞台で初安打を放った。「食事について個々に相談に来る選手もいます。選手の食事に対する意識が、徐々に変わってきた証拠ですね」と、うれしそうな葛西さん。しかし、まだ満足はしていない。

 「ここ(ファーム)での食事は上(1軍)で活躍するための体づくりの一環だと思っています。強い体をつくって上に送り出してあげたいですし、食に対して自分で考えて動けるよう、意識を高めていってもらいたいですね」。葛西さんは、若獅子のこれからの飛躍を信じて、日々奮闘する。

 (埼玉西武ライオンズ広報部・飯山優果)

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