埼玉新聞

 

シャインマスカットを特急ラビューで輸送 秩父地域で朝収穫、その日のうちに販売 西武鉄道が実証実験

  • 特急ラビューでシャインマスカットを輸送した実証実験=21日午前9時半ごろ、横瀬町横瀬の西武鉄道横瀬駅

 西武鉄道(所沢市)が電車で「貨客混載」の実証実験を始めた。秩父地域で収穫した果物を特急電車の空いた空間を使って都内に輸送し、その日のうちに販売する実験で、特急を使い農産物を運ぶのは初めて。新型コロナウイルスの影響で、特急などの利用客は落ち込んでおり、自動車輸送より定時性と速達性が強みの列車の空きスペースを活用した物流事業は新たなビジネスチャンスとみられている。運転手不足が指摘されるトラックなどの物流に替わる手段として、ほかの鉄道会社でも同様の取り組みが進められている。

 実証実験は21日から27日までの平日5日間で行い、運ぶのは横瀬町の小松沢レジャー農園で朝収穫したブドウ「シャインマスカット」40房程度、約30キロ。ブドウは専用保冷ケースに入れ、横瀬駅午前9時28分発の特急ラビューで東京都豊島区の池袋駅に輸送する。専用保冷ケースは車両の座席に置く。

 池袋駅には午前10時43分着で、直結する百貨店の西武池袋本店で午前11時ごろから販売。同店によると、関東圏で朝に収穫した農産物は、最速でも午後の早い時間帯に並ぶのが一般的という。

 21日の販売分は約1時間で完売した。同農園の町田恒夫さん(70)は「都内に直接届けられるので生産者としては販路拡大を期待している。秩父地域はブドウ以外にも農産物が豊富。生産者の意欲向上にもつながれば」と期待を込めた。

 西武鉄道では新型コロナの影響で4~6月期の定期外の運輸収入は前年同期よりほぼ半減。7、8月も前年より34%減っている。鉄道全体でも4月以降、前年を大きく下回る。鉄道事業の減収を補う施策を検討し、秩父地域の農産物を特急で運ぶ実証実験を決めた。

 今後は乗客らの反応も確認しつつ、導入の検討を進める。同社広報部は「鉄道輸送の利点は定時性と速達性。それを生かして沿線の農産物を運ぶことで、地域経済を支えたい」としている。

 新型コロナによる利用客減を受け、鉄道車両を使っての生鮮品を運ぶ取り組みはほかでも始まっている。JR東日本は16日から週2便のペースで、宮城県内で当日に水揚げした鮮魚などを東北新幹線で仙台駅から東京駅まで運ぶ定期輸送を始めた。東武鉄道は栃木県内の食料品などを特急電車で運ぶ実証実験に取り組む。

 近年、トラック運転手は若年層の新規就業者が少なく、人手不足が懸念されており、代替手段として貨客混載事業を始める鉄道会社はさらに増える可能性がある。

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