埼玉新聞

 

木に花咲かせ、願い込め…長瀞の養蚕農家で「モノツクリ」 小正月に合わせた予祝行事 穏やかな1年願う

  • 削り花を作る瀬能紀夫さん=13日午前10時ごろ、埼玉県長瀞町長瀞

    削り花を作る瀬能紀夫さん=13日午前10時ごろ、埼玉県長瀞町長瀞

  • 削り花を作る瀬能紀夫さん=13日午前10時ごろ、埼玉県長瀞町長瀞

 旧暦で満月にあたる小正月(14~16日)に合わせ、埼玉県長瀞町長瀞の養蚕農家の瀬能紀夫さん(83)方で13日、今年1年の豊作や無病息災を願う予祝(よしゅく)行事「モノツクリ」が行われた。繭玉飾りの木に使うニワトコの枝を鎌で削り、花びらの形に整える「削り花」などを作製。今年は能登半島地震の早期復興への願いも込め、熟練の技でキクのように見える花を咲かせた。

 かつて養蚕が盛んだった秩父地域の小正月は、繭や農産物の豊作を願い、繭玉や削り花などを飾る家が多かった。高齢化と後継者不足の影響で、現在の養蚕農家は瀬能さんと、秩父市の久米悠平さん宅の2軒のみ。小正月に予祝儀礼を行う家は極めて珍しくなった。

 削り花は長さ約4メートルのニワトコの枝を使用。瀬能さんは「ハナカキ」と呼ぶ小さな鎌を巧みに使い、枝の表面をそぐように削っていった。枝を1回削ると、薄い皮はくるりと丸まり、白い木肌が輝くキクのような花々が咲く。養蚕の神様「十六善神」にあやかり、1本の枝に16カ所花を付けた。

 オッカドの枝を使い、粟穂(あわぼ)・稗穂(ひえぼ)の飾り花や、あずき粥(がゆ)をかき回す際に用いる「ケーカキ棒」なども作った。

 瀬能さんは「豊作を祈ることも大事だが、新年早々に痛ましい自然災害が起きてしまったので、今年は『穏やかな1年』を特に願いたい」と話していた。

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