援助交際のトラブルや万引…少年の非行防止、本当の解決策は 県警親子カウンセラー、将来に目を向け考える
少年の非行防止のために相談を受け付ける県警の少年サポートセンターでは、児童相談所や教育現場などで働く臨床心理士らを「親子カウンセリング専門員」として迎え、多様な視点で相談に対応している。同専門員として、万引や暴力など少年を取り巻くさまざまな問題に応じてきた公認心理師の野口智美さん(40)。「過去ではなく将来のことを一緒に考えたい」と相談者に寄り添い、解決策を探している。
「当事者間では気持ちが伝わりづらいこともあるので、親子双方から話を聞くことが大事」と野口さん。面接の中では、親と子の思いや姿がお互いに正しく伝わっていないと感じる場面もあるため、カウンセラーが間に入ることで気持ちも伝わりやすくなるという。
野口さんは2005年から同センターで親子カウンセリング専門員として勤務。日頃は私立の中高一貫校などでスクールカウンセラーを務め、週に数回、同センターで面接などを担当してきた。
寄せられる相談は家庭内暴力や万引、深夜徘徊(はいかい)などさまざまで、問題行動を起こしてしまう原因も「複合的」。面接の中では、保護者が自身の子育ての仕方について悩む姿を目にすることもあるが、「今後どうしたらいいかを考える場なので、原因追究することはあまりしない」という。面接は子の年齢などによって、親子別々の部屋で話を聞いたり、口数の少ない子には心理テストを実施。状況に応じて対応の仕方を変えているが、心掛けているのは「健康的な部分に焦点を当てる」こと。問題行動ばかりではなく、毎日学校に行っていることなど、健康的な点に着目して本人にフィードバックしているという。
相談1件につき数年単位で対応が続くことも珍しくなく、以前担当した事案では、高校時代から成人するまで見守ったケースも。相談後も問題行動がすぐにはやまず、保護者が落ち込むこともあるというが、そんな時は「一過性のものなので、良いところを伸ばしていきましょう」と声を掛ける。万引がやんだら、次はお金の使い方を学ぶ―など問題行動をしないだけでなく、安心して本人を見ることができるかどうかを一つの基準として対応を進めている。
自身も2児の母である野口さん。相談者の話から気付くこともあり、「親としてためになることも多い」と話す。最近では、会員制交流サイト(SNS)を介した援助交際のトラブルなど、若い世代が被害に遭うケースも多いことから、「トラウマを抱えた子どものケアが必要」と感じている。「問題の解決には時間がかかる場合もあるが、落ち着いて将来を考え、居場所を見つけてほしい」。経験を生かし、相談者に寄り添ったサポートを続けている。
【親子カウンセリング専門員】1989年に始まった少年の非行防止のための「資質鑑別制度」で相談に対応してきた資質鑑別専門員のこと。現在は親子カウンセリング専門員と呼ばれ、県警少年サポートセンターでは5人が勤務。臨床心理士や公認心理師の資格を持ち、児童相談所や教育現場などと兼務しながら、相談対応に当たっている。昨年、同センターが受けた相談は424件。家庭問題や万引などの非行行為、友人関係などの学校問題が多く、延べ約1600回の面接を行った。