<活字文化の日>アロハ太朗さん、漫画家を目指そうと思った1冊 文字から五感すべて刺激、想像できる魅力
10月27日~11月9日は「読書週間」。初日にあたる10月27日は「文字活字文化の日」に制定されています。埼玉新聞では同日付で、「私の名著~心に残る一冊&フレーズ~」と題した特集を掲載しました。
地元埼玉県にゆかりのある著名人の方々が、本との出会いや読書の素晴らしさを伝えています。本記事は同特集からの抜粋です。
■漫画家・アロハ太朗さん、私の名著
純文学を中心に、人間の愛情や心の交流を描いた作品を好んで読みます。後味が良い内容が好きですね。新聞広告や書評で「これは流行るかも」といった一冊を見つけて買ったりもします。本は文字が書き連ねられているだけなのに、文章を読むことで情景や音、匂いなど五感すべてが刺激を受けます。「好き勝手に想像できる」という活字の魅力を、多くの人にも味わってほしいですね。
人生を振り返って、真っ先に原風景として浮かぶのが「天才バカボン」です。小学校中学年の頃、必ず寝床の横に置いてあり、読んでいました。落語や映画といったエンタメ要素が凝縮された作品で、漫画家を目指そうと思ったきっかけです。
中学生時代には星新一の作品に夢中になりました。物語を活字だけで完結させていることが素晴らしくて、「緻密なオシャレ」だなと個人的には思います。「おーい でてこーい」という作品が好きで、現代社会にも当てはまるような内容に、思わず背中がゾッとするような感覚になったことを記憶しています。
20代後半になった時、ふと日本文学を片っ端から読みたいという衝動に駆られました。当時は電車に乗ると、週刊の漫画雑誌を読む人が多かった時代。漫画家という職業をしながらも、ある種のアンチテーゼで日本の文学作品を読みあさりました。
太宰治や夏目漱石、井伏鱒二など様々な作家に触れましたが、印象的だったのが志賀直哉。日常を飾ることなく、ありのままの姿で描く作品の数々に感銘を受けました。よく「小説の神様」と称されますが、私は特に「短編小説の神様」だと思っています。おすすめは「清兵衛と瓢箪」。他者との価値観の違いや人生の歩み方などを考えさせられる物語です。
「本の虫」とまでは言いませんが、様々なジャンルの作品と出会ったことで、今の私が創られている気がします。漫画はもちろん、「文章」で自分の思いを表現することにも挑戦していきたいですね。
■私のおすすめBEST3
(1)「天才バカボン」 赤塚不二夫 著
(2)「清兵衛と瓢箪」 志賀直哉 著
(3)「おーい でてこーい」 星新一 著
■アロハ太朗(あらい太朗)
1966年1月11日生まれ。旧大宮市出身。さいたま観光大使。共同通信社にて世相漫画を執筆、埼玉新聞では毎週日曜日に掲載。FM NACK5「Good Luck!Morning!」に出演中。