能登半島地震、非常に厳しいトイレ事情 水なくて深刻、生きるための飲料水も大事だが…生活用水も 派遣隊も心の整理「果たして到達できるか不安」 現地で温かい言葉、小学校の理科室で炊き出しも
能登半島地震の被災地支援のため、石川県七尾市で先遣隊および第1班として避難所運営支援業務に従事した県職員のうちの2人が16日、大野元裕知事に帰任の報告などを行った。職員は現地の被災者からの「ありがとうの言葉が励みになった」と振り返りながら、災害時の水の重要性などを痛感したという。大野知事は「支援を受ける立場になったとき、どのように発信していくか。能登半島地震については、全体像を整理してから県の対策に生かしたい」と述べた。
派遣されていた県危機管理防災部災害対策課の佐保貴之副課長(52)と新井敦偉主事(29)が報告。拠点となった七尾市役所を中心に、県が段ボールベッドや簡易トイレの物資支援を行った天神山小学校で、理科室を使った炊き出しの様子などを伝えた。被災の度合いが大きかった崎山地区コミュニティセンターでは地区のまとまりが強く、皆で寄り添いたいという思いから、部屋を広く使っていた状況などが紹介された。
日中は絶えず物資を取りに来る被災者に対応しつつ、第1班として派遣されている職員11人で各地の避難所のニーズを24時間態勢で拾い上げた。班長を務めた佐保副課長は「水が非常に厳しい状態だった。行く前は飲料水がないと生きていけないという思いが強かったが、生活用水がない中でのトイレ事情。水の概念が変わった」と避難所での実体験を振り返った。
新井主事は「七尾市では顔が見える関係が強かった。防災訓練などを通じて今後に生かしたい」と日頃の連携強化や、「各避難所ごとの中心人物と一緒になって、避難所運営をしてほしいと次の班に引き継いだ」と、被災者間でリーダーシップを発揮する人材の重要性を説いた。
佐保副課長は、被災地へ赴く際に「果たして到達できるのかも含め、不安しかなかった。余震も怖く、職員の命も守らなきゃいけない。覚悟するまでに少し心の整理は必要だった。行ってみれば大きな経験になった」と語り、「(現地の)職員や町会長から言っていただいた、屈託のないありがとうの言葉が励みになった」と実感を込めた。
大野知事は「被災者の方々が徐々にでも日常を取り戻す重要な一歩。本当にお疲れさまでした」とねぎらい、同日午後の会見では「(実際に派遣された)職員が避難所のニーズを県に伝え、多くの感謝を頂いた。これは(大規模災害時の)情報伝達の難しさを示している」と述べた。