となりのトトロの宮崎監督もメッセージ 所沢の環境保護団体が本を出版、活動をまとめ30年の足跡残す
所沢市や入間市、東京都東村山市などにまたがる狭山丘陵で土地を買い取るナショナルトラスト活動を進めている所沢市の環境保護団体「トトロのふるさと基金」(安藤聡彦理事長)が設立30周年を迎え、これまでの活動をまとめた本「トトロの森をつくる」を出版した。団体名の由来になった映画「となりのトトロ」の宮崎駿監督もメッセージを寄せている。専務理事の荻野豊さん(72)は「30年よくやってきたという思い。今振り返ると夢のようだったが、しっかりと足跡を残せた」と感慨深げに振り返った。
狭山丘陵は1980年代後半のバブル経済期に建設残土の処分場や資材置き場の乱立、粗大ごみの不法投棄などで自然破壊が進んだ。「開発し尽くされてしまのでは」と危機感を覚えたメンバー約20人が90年、同基金の前身となる「トトロのふるさと基金委員会」を設立。寄付を募り、91年8月には所沢市上山口に「トトロの森1号地」を取得した。クヌギやコナラが生え、スギの大木もある雑木林だ。
今年7月には53、54号地を取得し、総面積は10万平方メートルを超えた。寄付は総額約9億4900万円に上る。取得した土地は周囲の環境調査などを行い、管理方針を策定。月1~2回、枝拾いや草刈りなどの管理作業を行い、里山の森を人間と生き物が関わりながら絶妙なバランスで保全している。
全てが順調に運んだわけではない。「メンバーの意思がずれることもあったが、意思がばらけた時には原点に戻ることでやってきた。一人ではとてもできない、大勢の仲間とここまでこれた」と荻野さん。
活動のシンボルには映画「となりのトトロ」からトトロの名称やイラストが使用されている。映画の舞台として所沢市近郊の原風景が参考にされていることや、宮崎さんが市内在住であることからトトロの名称を使用することを願い出て、許諾を得た。
宮崎さん自身も基金の顧問を務め、保全地をふらりと訪れることも。本の中でトトロの森47号地を訪れた際に目にした光景に触れ、活動の広がりについて「海までつづく沖積平野が見えるところまで、トトロはたどりついたのです。たくさんの人々の努力に心をゆさぶられる瞬間でした」と記している。
事務局長を務める北浦恵美さん(55)は「たくさんの協力者がいることを実感し、他の団体にも勇気を広げられる。先達(せんだつ)の方たちの思いを若い人たちに残していきたい。多くの方に手に取ってもらえれば」と話していた。
「トトロの森をつくる」は合同出版発行、A5判248ページで税抜き1600円。書店やネット通販、同基金ホームページから購入できる。
問い合わせは、同基金(電話04・2947・6047)へ。