埼玉新聞

 

雪の夜、路上に女性倒れる…放置すれば命の危険も 帰宅途中の男性、2時間かけ自宅に送る 武南署が感謝状

  • 斎藤正士署長(右)から感謝状を贈られた大河原稔さん=武南署

 2月9日深夜、雪が舞う蕨市錦町の路上で、植え込みに倒れ込んだ女性(80)を助け起こし、徒歩やタクシーで約2時間かけて川口市内の自宅に送り届けたとして、武南署は、川口市芝中田、パート従業員大河原稔さん(34)に感謝状を贈った。斎藤正士署長は、「雪で厳しく冷え込んだ夜間のことで、女性を放置すれば命が危険だった」と、大河原さんの行動をたたえた。

 女性は、同日午後11時45分ごろ、同所の植え込みに倒れ込んだ。近くのスーパーの清掃作業を終え徒歩で帰宅途中の大河原さんは迷わず駆け寄り、女性を抱きかかえた。顔から血が出ていたが、女性は「大丈夫」と言い、救急車や警察へ知らせることを「家人が心配するから」と断った。女性が「自宅は近く」と言ったため、大河原さんは送り届けることにした。

 「こっちだよ」と女性が言う南の方向に歩き、埼京線の下まで来た。歩き始めてから1時間近い。もう一度聞いてみた。「おばあちゃん、お宅はどちら?」。「川口の前川だよ」と女性。正反対の方向だった。午前1時ごろになっていた。大河原さんは大通りでタクシーを捕まえ、川口市前川へ向かった。タクシーの運転手も協力した。

 前川地域に入ると、深夜なのにひときわ明るい電灯がともる家があった。「ここだよ。私んち」と女性は元気な足取りでその家の中へ。家の中では女性を迎える若い女性の声が起こり、あちこちへ電話をかけ始めた様子だった。

 「家の人はみんなで四方に散り、おばあちゃんを探していたようでした。こんな夜ふけにみんなで探し続けるなんて、愛されているんだなと感じました」と大河原さん。

 普段は自転車通勤だが、パンクで仕方なく、歩いて帰るところだったという。「でなければおばあちゃんとは出会わなかったでしょうね」

 女性はショートステイの施設から出て行方不明になっていた。施設や家族からの知らせで武南署も探していた。

 斎藤署長から感謝状を受け取った大河原さんは「目の前に倒れた人がいたら、誰でも同じことをすると思う」と語った。山形県山辺町出身。川口に住み14年になるという。

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