能登半島地震…入浴中だった夫死亡、必死で逃げた妻が涙 「愚痴でもいい、何でも話して」と寄り添う隊員に妻、悲痛の思いを打ち明ける どう声かけるか悩んだ隊員、精いっぱい話を聞く 避難生活「これ以上言えない」と思い詰める人も
能登半島地震で被災した石川県珠洲市に派遣され、相談業務などに従事していた埼玉県警の特別生活安全部隊が現地での任務を終え、県警本部で取材に応じた。大切な家族や生活の基盤を奪われ、厳しい避難生活を余儀なくされている被災者。隊員たちは少しでも不安を解消しようと、折り紙で鶴を折るなどして寄り添い耳を傾け、傷ついた心のケアに当たった。
同隊は県警生活安全部から編成された6人で、男性1人と女性2人の2グループに分かれて活動。11日に被災地に入り、12日から19日まで、体育館や集会所、集落など25カ所を訪問し、20日に帰県した。
「空き巣が発生している」「断水が続く」「下着が足りていない」。珠洲市は被害が大きく、被災者から寄せられる相談もさまざまだった。米田純也警部補(43)は「家や家族をなくし、仕事もない。前向きというより、一日をどう生きるかを考えている人が多かった」と印象を語る。
飯高翠巡査長(35)は「悲惨な状況は把握していたが、地面の亀裂や家屋の倒壊があり、凄惨(せいさん)な光景を見て復興には時間がかかる」と感じた。被災者の中には「支えられながら生きていて、これ以上ものを言うのはぜいたくじゃないか」と思い込む人も見受けられたという。混乱の中、女性が性犯罪被害に遭わないよう、「一人で入浴するのは危険だから、複数人で見回りながら入るように」などの助言もした。
栄美香巡査部長(40)は「愚痴でもいいから何でも話して」と被災者に寄り添うことを心がけた。耳の不自由な高齢女性は涙ながらに被害を訴えた。地震で入浴中の夫が亡くなり、自分は必死に逃げてきたという内容だった。「どう声をかけたらよいのか悩みながら、分かる範囲で精いっぱいお話を聞いた」と振り返る。
災害はいつ、どこで起きるか分からない。米田警部補は支援を終え、「どういう物資や装備が必要か教訓を得られた。もっと活動しやすく、被災者の力になれるように今回の経験を引き継いでいきたい」と力を込めた。