プリンは1位、ケーキなどは2位…実は“スイーツ激戦区”さいたま市 広がり続けるさいたまスイーツ
■“埼玉都民”も満足の味
人口約134万人の埼玉県さいたま市は菓子店が多い“スイーツ激戦区”。「さいたまスイーツ」という言葉もよく耳にするようになった。
なぜ、市内にスイーツ店の出店が多いのだろう?中小企業庁埼玉県よろず支援拠点のコーディネーター斉藤哲也(51)は「(人口が多く)市場が大きい一方で、都内より家賃が安く出店しやすい」と分析。さらに県洋菓子協会など組織がしっかりしていて、サポート体制が整っていることも挙げる。理由の三つめは、激戦区東京に隣接していること。「舌の肥えた“埼玉都民”が多くいることも大きいのではないか」
さいたま市南区沼影のパティスリーアプラノスは、国内外で多くの受賞歴を持つ朝田晋平(60)がオーナーパティシエの洋菓子店。2011年のオープン当初からの常連客、松田龍夫(71)、しづ子(71)夫妻は「(おいしくて)ケーキに目覚めちゃった感じ。東京で買ってこなくても、こんなにいいお店が近くにあるじゃないかってね」。
朝田はプリンスホテル、パークハイアット東京などを経て、1999年のロイヤルパインズホテル浦和開業の際にシェフパティシエに就任した。2005年にエグゼクティブペストリーシェフとなり、退職するまでの12年間、スイーツ部門を担った。「(旧浦和は)都内の有名店の出店が多く、求められる菓子のレベルも必然的に高くなった」と振り返る。
「お菓子は場所場所でいいお店がある。そのエリアで求められているものを情報収集して提供することが大切」。そう語る朝田がこだわるのは素材。イチゴは市内緑区にある美園いちごランドの「あまりん」などを使用。リンゴは福島、かんきつ系は和歌山、ぶどうは長野の農家と直接交渉し、旬の果物を仕入れる。
チョコレートに使うカカオは、ベルギーの企業が運営するベトナムの農園で、現地の農家を貧困から救うシステムで生産している。「カカオの品質が高く、チョコレートはベルギーのクオリティー。生産者に還元されるストーリーがいい」とほほ笑む。
県洋菓子協会の会長も務める朝田は、後進の育成にも力を注ぐ。店で働くパティシエの指導はもちろん、県内外の同業者から開業の相談を持ちかけられることも多い。
小中学校でも講師を務め、同業の若手から「小学校の時にシェフの話を聞いてパティシエを目指した」と言われることも。「仕事の魅力を伝えることで裾野が広がり、レベルアップしていければ」と願う。(敬称略)
■プリンは全国1位
さいたま市ではスイーツの消費量が近年高く推移している。総務省が全国の主要都市を対象にした家計調査によると、2020年~22年の平均で、プリンは全国1位、ケーキ、アイスクリーム、菓子類は金沢市に次ぐ2位。そのほかの菓子類も上位を占める。
消費拡大を受けて、市商業振興課では、「市内で作られているおやつ」を「さいたまスイーツ」として魅力発信と認知度の向上を図る「さいたまスイーツ等プロモーション事業」を展開。19年にさいたまスイーツのウェブサイトを作成し、現在約130店舗の情報を交流サイト(SNS)などを通じて発信している。
昨年10月には大宮区のソニックシティで「さいたまスイーツビュッフェ2023」を開催。市内各店のスイーツを食べ比べ、連携企画として高校生のレシピをプロのパティシエが限定で商品化するイベントを実施している。同課では「今後も拡散に力を入れていきたい」としている。