イオン川口の工事現場に巨大壁、鳩ケ谷高生が絵描く 現場責任者、生徒にお礼 散歩の幼稚園児、絵に感動
コロナ禍の暑い夏だった。埼玉県川口市里の県立鳩ケ谷高校の美術部員たちが学校近くの工事現場を囲う厚い鉄板の塀に四季の風景を描いた。殺風景だった街の景色に彩りが生まれ、散歩に来た近くの保育園児たちが「きれいだね」と言った。工事現場の所長はお礼にと今月、美術部員を招き、ドローンを飛ばして部員と壁画を撮影。映像をプレゼントした。
工事現場は鳩ケ谷高校の西側に道路を隔てて隣接する川口市安行領根岸のイオンモール川口の建設現場。同モールは34年間営業し2018年に営業を終了。サイボー(飯塚剛司社長、本社・川口市)とイオンの共同開発として、内容を一新して21年3月の開業を目指し、ゼネコンの安藤ハザマによる建設工事が進んでいる。
巨大なショッピングモールの建設現場を囲う壁は長さ1キロ以上になる。その一部分、南側の住宅街に面した約50メートルが美術部員たちのキャンバスとなった。
高さ3メートル、白く塗られた鉄の板に、美術部員たち男女19人は7月末から8月の夏休みに、スプレーで絵の具を吹き付ける技法で四季を描いた。春は桜やチューリップが咲き、ウサギも出てくる。夏はイルカが跳び、カニが遊ぶ海。秋はあかね色に染まる木々。冬は海に浮かぶ流氷だ。
「多くの人に見てもらいたいという思いを込めて描いた」と、美術部長の2年生杉崎春奈さん(16)。部員で2年生の中山杏さん(16)は「散歩の幼稚園の子どもたちが『きれいね』と言ってくれたのがとてもうれしかった」と言う。
今年春からの新任教師で、顧問の教諭矢野晋次さん(26)は「私も部員も共同制作は初めて。部員たちが意見を出し合いながら完成できた。こんな大きなキャンバスはなかなか体験できない。いい経験になった」。
安藤ハザマの工事統括所長の松野聡さん(52)は「殺風景な壁だったので、皆さんの絵がありがたかった」と話した。
工事現場の所長が今月、美術部員を現場に招き、ドローンを飛ばして部員と壁画を撮影し、映像をプレゼントした。数分のロケーションだったが、生徒たちは笑顔でドローンに手を振った。松野所長は部員たちに帽子を取り、「ありがとうございました」とお礼の言葉を述べた。
工事は来年3月ごろに完成し、壁は年内か年明けに撤去される。