ば~か…男児亡くした母に誹謗中傷の攻撃 「捕まえてみろ~」と書いた人特定、他にも 母親「何度も絶望」
暴言などを書き込んで、他者を攻撃するインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷の問題。事件や事故の被害者、遺族らが攻撃対象となるケースもあり、二次的な被害を引き起こす危険性もはらむ。埼玉県熊谷市で2009年に発生した小学4年の男児が死亡した未解決のひき逃げ事件でも犯人を装うようなメールが送られ、息子を亡くした母親は「事件の捜査や犯人逮捕を願う活動を乱されたようだ」と憤っている。
事故は09年9月30日午後6時50分ごろ熊谷市本石の路上で発生。帰宅途中だった小関孝徳君=当時(10)=が死亡した。事件から10年が経過した昨年9月には、罪名が自動車運転過失致死罪(当時)から危険運転致死罪(同)に変更され、時効は10年延長。母親が民間の事故調査会社に依頼した証拠品の鑑定では、事故に2台の車が関与した可能性が指摘されている。
「ごめんなさい」。自動車運転過失致死罪の時効が4カ月後に迫っていた昨年5月、事件の情報提供用に公開している母親のメールアドレスに突然、謝罪のメールが届いた。それ以外に文章はなく、並んでいるのはたった6文字。約1週間後、同じ差出人から届いたメールは「捕まえてみろ~。ば~か」と犯人を装うかのような内容だった。
同時期には、時効撤廃や情報提供を求める母親の活動に対し「諦めなよ。未練がましい」と非難するコメントもブログに付けられた。
犯人を装うメールはその後、北陸地方に住む30代男性が送信した虚偽のものだと分かり、男性は同年12月、軽犯罪法違反容疑で書類送検され、不起訴処分となった。
メール以外にも、熊谷市の当時60代の男性が交番にうその情報提供をしたり、「サッカー少年をひき逃げした」と虚偽の110番をしたこともあった。男性は同法違反の罪で略式起訴されたが、母親は「犯人逮捕という本質ではないところで悩まないといけないことが精神的にもつらかった」という。
当時はまだ罪名変更も決まっておらず、時効間近の時期。「せめて(ひき逃げした2台の車のうち)1台の犯人でも捕まってほしい」と願う中、捜査を妨害されるような行動が重なり、「絶望感を何度も味わった」。
これまでは善意で情報提供をしてくれる人がためらってしまうのではないかと思い、誹謗中傷を明らかにしてこなかったが、社会問題化している事態を踏まえ、公表に踏み切ったという。
母親は「遺族は切実な思いで情報提供などを呼び掛けているのに。誹謗中傷は遺族にとっては冗談では済まされない行為。なぜそういう行動をしてしまうのか、本当の理由は分からないが、やめてほしい」と話した。