埼玉新聞

 

<新型コロナ>合唱できる特別マスク、埼玉新聞が紹介 読んだ川口・領家中学校長、合唱コンクール開催決断

  • 東京混声合唱団開発の特別なマスクを着けて合唱練習に励む領家中学校の生徒たち=26日、川口市

 埼玉県川口市領家の市立領家中学校(小出喜代子校長、生徒数473人)で、音楽の合唱練習用に東京混声合唱団が開発した歌える特別なマスクを使って生徒たちが合唱練習に励んでいる。年に1度、全校のクラス対抗で競う全校合唱コンクールに向けての練習。本番は12月1日、川口駅前のリリア大ホールだ。

 「コロナ禍で、いろいろな学校行事が中止になってしまった。でも生徒たちには座学以外の行事が必要です。そこで学ぶことがたくさんあるのにつらいです」と、小出校長は悩みを語る。

 中でも全校のクラス対抗合唱祭は大事なイベントだった。本番へ向けて、クラス全員の心が一つになることも魅力だ。「受験に必要な教科だけではなく、人間形成のために学校教育ならではの学びも大事」が小出校長の哲学という。

 「市内の多くの中学校では今年、1学期に合唱祭の中止を決めた。でも、私は諦めることができなかった。会場のリリアもキャンセルしないで頑張っていた。不安だった。ところが、8月に埼玉新聞で東京混声合唱団が歌えるマスクを開発して売っているという記事を見つけた。これだ、と思った」

 マスクは鼻と口をピッタリ覆うのではなく、鼻と口の前にカーテンを垂らすような仕組み。普通のマスクとは違い、歌声がきちんと聞こえた。「飛沫(ひまつ)も飛ばない。これなら、生徒たちは合唱練習ができる」。小出校長は全校生徒分のマスク購入を決断した。手作りなので1個1300円。費用の半分はPTAと学校後援会が引き受けてくれた。

 昨年の会場はリリアの音楽ホールだった。今年は、保護者ら家族を呼べるようにと、大ホールで開催することを新型コロナウイルスの感染拡大前から決めていた。コロナ禍のため家族は呼べないが、客席は1人置きに座るので、大ホールを予約しておいてかえってよかった、という。

 小出校長は「3年生は大事なイベントが何もない。でも、合唱コンクールができることになって喜んでいた。目が生き生きと輝いている。この喜びは普通じゃない。その姿を見て1、2年生も頑張っている」と語った。

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