埼玉新聞

 

小さく生まれた赤ちゃん、どう育つ 不安なママの支えに 上尾の看護師、家族会発足「一人じゃないよ」

  • 「小さく産まれた子どもと家族の会『一歩』」を立ち上げた川満ひとみさん(右)と1歳10カ月となった次女・夏歩ちゃん=上尾市内

  • 897グラムで生まれた川満ひとみさんの次女。生後3日目に撮影した写真(川満さん提供)

 早産や胎児発育不全により、小さく生まれた赤ちゃんを持つ親の支えになりたいと、埼玉県上尾市の看護師川満ひとみさん(35)が奮闘している。自身も897グラムで次女を出産。「手のひらサイズ」の赤ちゃんがどう育っていくのか、同じ体験をした人が周囲におらず、大きな不安を抱えた川満さん。地域で当事者同士が集まる「居場所」が必要と、早産で生まれた子とその親でつくる家族会を立ち上げ、月1回オンライン交流会を開いている。「孤独や不安の中にいるママに、一人じゃないよ、と伝えたい。その子なりに一歩一歩進んでいく姿を喜び合える会にしたい」と語る。

■孤独でつらかった日々

 県健康長寿課によると、2018年、県内で2500グラム未満で生まれた「低出生体重児」は4816人で、全体の出生数の9・4%を占める。川満さんの次女のように千グラム未満の「超低出生体重児」は146人だった。

 昨年2月、川満さんは妊娠25週で破水し、次女夏歩ちゃんを予定より3カ月半早い妊娠26週で出産。さいたま市内にある病院の新生児集中治療室(NICU)に入院した。現在、元気に育つ夏歩ちゃんだが、当初、医師から早産による死亡や目や肺に重い合併症が出る可能性を告げられた。出産時の祝福ムードはなく、病状に一喜一憂する毎日。「同じ経験をした人がいなくて孤独でつらい日々だった」と振り返る。

 情報を求め、検索した会員制交流サイト(SNS)で早産した母親たちと知り合った。「うちも小さく生まれたけど今は元気です」などのメッセージで少しずつ前向きになっていった。

■相談体制の必要痛感

 川満さんはことし1月、「小さく産まれた子どもと家族の会『一歩』」を立ち上げた。SNSやチラシで同会を知った県内の女性ら約30人が公式ラインに登録。メンバーは千グラム前後で生まれた子どもを持ち、病気や発達に不安を抱える人が多い。川満さんによると、出産直後が一番悩む時期というが、退院後も育児負担は大きく「体が小さい」「保育園に通えるのか」と長期にわたる相談体制が必要だという。

 11月下旬に開かれたオンライン交流会には、0~1歳の赤ちゃんがいる女性や助産師ら10人が参加、困り事や出産直後のつらかった心境を語り合った。長男(1)を787グラムで生んださいたま市の会社員女性(31)は「同じ立場の人でないと分からないこともある。共感してもらえて救われた」と語る。

■冊子作成、県などに要望

 同会が力を入れるのが、低出生体重児のための冊子「リトルベビーハンドブック」の普及だ。母子手帳を補完する冊子で、発達の特徴を紹介したり、NICUでの様子を記入する欄がある。自治体としては、18年に静岡県が初めて作成し、徐々に広まりつつある。県内では19年度から川口市が配布。同会は「ぜひ県版を」と県などに要望書を出しているという。

 現在はオンラインだが、コロナ収束後はさいたま市周辺で交流会を開く予定。家族会への連絡は「一歩」の公式ライン(https://lin.ee/yDXY7uI)へ。

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