埼玉新聞

 

男子生徒が涙…妊娠や命の誕生、助産師が訴え 八潮の中学校でいのちの授業 性的同意の重要性も訴え

  • 人形を使いながら、生徒たちに誕生の過程を説明する助産師の直井亜紀さん=八潮市立潮止中学校

 埼玉県八潮市内の中学校で、命の尊さや性について考える「いのちの授業」が行われている。この授業は、同市で助産院を営む助産師の直井亜紀さん(50)が講師を務め、毎年市内の中学3年生全員にクラス単位で行われ、今年で10年目となる。授業を通じて、直井さんは生徒たちの心に温かいメッセージを送り続けている。

 「おなかの中でみんなが動くのを感じた時、お母さんはどんな言葉を掛けてくれただろう」「元気に育ってうれしいって、笑顔になったと思う。動くだけでお母さんを笑顔にして、親孝行した日があったんだよ」―。

 誕生し、命名され、ハイハイやお座り、歩けるようになった時などさまざまな成長の節目を迎える中で、誰もが必ず大人に守られて育った日々があると直井さんは生徒たちに語り掛けた。

 いのちの授業は、直井さんが「地域の子どもたちに命や性について伝えたい」と提案したことがきっかけとなり、市独自のカリキュラムとして2011年から始まった。命の誕生に焦点を当てた助産師ならではの授業では、思春期という多感な時期を過ごす生徒たちの心を揺さぶり続けている。

 授業では、直井さんがスクリーンや人形を使いながら、妊娠や誕生の過程について説明。母親が妊娠に気付く頃の胎児の大きさはお米一粒ほどだと聞くと、生徒たちから「小さい!」と驚く声が上がった。

 妊娠や誕生の過程を説明した後に、直井さんは語り掛けた。「私たち全員に幸せな未来を願い名前を付けられ、優しく抱っこされた日々がありました。いじめられたり、ばかにされるために生まれた命はありません」。さらに、卵子の寿命や、性行為などで互いの意思を確認する性的同意の重要性についても訴え、「性という字は心が生きると書く。自分らしくありのままで生きること」と語った。

 授業を受けた男子生徒は「受験のストレスなどで母親に強く当たってしまった」と涙を流しながら、「自分が頑張っていくことで、これからたくさん親孝行していきたい」と語った。別の男子生徒は「命の大切さを改めて感じ、感動した。自分は小さいころ病気がちで大変な思いをさせてしまったので、お母さんに感謝したい」と話していた。

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