埼玉新聞

 

人と一緒に安らげる場を さいたま市南区の保護猫カフェ「不幸な子、減らしたい」

  • 猫と触れ合ったり遊んだりしてリラックスする男性ら=19日午後、さいたま市南区の保護猫カフェ「猫のいる家やすらぎ」

    猫と触れ合ったり遊んだりしてリラックスする男性ら=19日午後、さいたま市南区の保護猫カフェ「猫のいる家やすらぎ」

  • 猫と触れ合ったり遊んだりしてリラックスする男性ら=19日午後、さいたま市南区の保護猫カフェ「猫のいる家やすらぎ」

 2月22日は「にゃん、にゃん、にゃん」の語呂合わせで「猫の日」。ペットフード協会(東京)が昨年末に発表した猫の飼育数は約906万9千匹で、犬の684万4千匹を大きく上回る。しかし、全ての猫たちが幸福な“猫生”を送るわけではない。野良猫の多くは病気や交通事故で命を落とすリスクが高く、遺棄される飼い猫も少なからずいる。そうした猫たちを保護し、里親に譲渡する活動を行っている保護猫カフェ「猫のいる家やすらぎ」が、さいたま市南区にある。オーナーの天野和子さん(72)は「見て見ぬふりはできない。不幸な猫たちを一匹でも減らしたい」と語る。

 記者が取材に訪ねると、不思議そうな表情をして猫たちが寄ってきた。カメラが気になるようで、シャッター音が鳴るたびにびくっと身を引きながらも、代わる代わるレンズをのぞき込んでくる。

 左ももに重みを感じ、見るといつの間にかキジトラがちょこんと座っていた。雌のしーちゃんだ。「野良猫のきょうだいの中で4番目に保護したからしーちゃん」と天野さんは名前の由来を教えてくれた。やすらぎにはしーちゃんのほかチャチャ、ハチ、さびちゃんなど現在22匹の猫がいる。

 クロやブチ、サビなど模様は多彩で、性格も気が強かったり、人懐っこかったり、臆病だったりさまざま。共通しているのはみんな保護猫だということ。やすらぎでは人に慣れないなど「ワケあり」の7匹を除いて、カフェの猫たちの里親を募集している。

 天野さんが保護猫活動に携わるようになったのは30年以上前。「地域の人たちと捨てられた猫や野良猫が産んだ子猫を保護し、飼い主を捜したり、家で保護するようになった」のが始まりだ。活動をより広く知ってもらおうと2015年にやすらぎをオープンし、保護猫と里親の出会いの場を提供している。

 開設以来、100匹を超す猫の里親が見つかった。遠方から訪れる里親希望者や2匹目を引き取った里親も。「猫を飼うなら保護猫がいいという人もいる。保護猫の認知が進んで、猫を飼いたい人の意識も変わってきているのかも」と天野さんは語る。

 里親募集と並び、もう一つの目的が猫も人も安らげる場所の提供だ。保護した猫に安らいでもらい、同時に猫を飼いたくても飼うことができない人たちの癒やしの場にしたいという思いが店名に込められている。

 県内在住の常連男性も、おもちゃで猫と遊びながら「実家で猫を飼っているが、今は1人暮らしで猫が飼えない。こういう場所はありがたい」と笑顔を見せる。

 天野さんによると、常連客が動画投稿サイトのユーチューブに動画をアップしたり、知人の男性がホームページ(HP)開設を手伝うなど地域にも助けられながら、やすらぎを運営しているという。

 HPで保護猫情報などのブログ更新を担当する近隣に住む女性はこう話していた。「猫は自分が捨てられたと思っていない。ただ人間に対する親密さだけが残っているんだよね」

■23年度の殺処分61匹

 さいたま市と中核市を除く県管轄の2023年度の猫の殺処分数は20日現在の速報値で61匹。その多くが産み落とされて間もなかったり、けがや病気で自活できずに保護された野良猫だ。

 生活衛生課によると、県管轄殺処分数は14年度には1432匹だったが、16年度は869匹と千匹を割り込み、以降は500匹前後で推移。ここ数年は21年度が328匹、22年度が190匹と減少傾向にある。本年度の殺処分数について、担当者は「楽観視することはできないが、過去一番低いペースだ」と話す。

 減少の要因の一つが野良猫の不妊・去勢手術の推進だ。県では「彩の国動物愛護推進員活動補助事業補助金」や「県飼い主のいない猫の不妊・去勢手術推進事業補助金」などの交付を個人や自治体に行い、1匹当たり5千円を上限に手術費用を補助している。

 県は、県動物愛護管理推進計画で、30年度に犬猫の殺処分数「ゼロ」の達成を掲げている。16日現在、熊谷市とさいたま市の動物指導センターには計9匹の猫が収容されている。

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