埼玉新聞

 

<熊谷小4ひき逃げ>母親がくぜん…息子の腕時計紛失で公文書破棄、元警部補が否認「犯人ではない」/地裁

  • さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂

 埼玉県熊谷市で2009年に発生した小学4年の小関孝徳君=当時(10)=が死亡した未解決のひき逃げ事件で、県警が紛失した孝徳君の腕時計に関する捜査書類を破棄したとして、公文書毀棄罪に問われた、県警交通捜査課の元警部補の男(62)の初公判が16日、さいたま地裁(任介辰哉裁判官)で開かれた。男は「破棄した覚えはない」と起訴内容を否認した。

 灰色のスーツ姿で入廷した男は、裁判官から起訴事実について問われると、「腕時計を紛失したという認識はなく、発覚を免れようとした覚えもない。公文書という認識もなく、書類を破棄した覚えもない」と答えた。弁護側も「書類を破棄した犯人ではない」と無罪を主張した。

 検察側の冒頭陳述によると、15年に証拠品の登録手続きをする中で、腕時計の紛失が判明。腕時計の記載がない書類を作成して母親に交付し、証拠品に関する書類を破棄した。検察側は「紛失の事実が判明すれば自己の責任問題に発展しかねないと思い、書類を差し替えようと考えた」と指摘した。

 裁判後、孝徳君の母親は「起訴内容全てを否定されたのでがくぜんとした」と憤りをあらわにした。「法廷での発言を聞いていると、証拠品の保管態勢だけでなく、『本当にひき逃げの犯人を逮捕する気があったのか』と当時の捜査態勢にまで疑問を感じてしまう。男には真実を話してほしい」と話した。

 起訴状によると、男は事件発生当時から、県警交通捜査課の警察官として、孝徳君の事件を担当。証拠品として押収していた腕時計の紛失が発覚することを免れるため、15年9月、証拠品に関する書類2通をシュレッダーで破棄したとされる。

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