埼玉新聞

 

市立幼稚園の募集停止に波紋 園児不足など理由、上尾市が発表 保護者ら存続求め陳情書「必要な人いる」

  • 上尾市役所=埼玉県上尾市本町

 埼玉県の上尾市が市立平方幼稚園について園児不足などを理由に来年度の募集停止を決め、波紋が広がっている。来年4月から園児1人となるが、保護者や卒園生らは園の教育方針などを高く評価。有志75人で開会中の市議会12月定例会に情報公開と園の存続を求める陳情書を提出した。「必要としている人がいることを認識して、ぜひその精神を残してほしい」と訴えている。

 平方幼稚園は市内で唯一の公立幼稚園として1965年に開園し、2年保育で4~5歳児を受け入れてきた。旧平方町の頃からあった幼稚園で、合併する際に地元の人たちが声を上げて存続を嘆願した経緯がある。

 しかし、園児数は76年の223人をピークに減少を続け、現在は定員100人に対し4歳児1人と、来年3月に卒園する5歳児14人の計15人のみ。一方、本年度の園の運営費は約4千万円に上っている。

 市は園児減少による教育環境の変化に加え、コロナ禍による財政の悪化や園舎の老朽化などからも「存続は極めて厳しい」と判断。今年10月に募集停止を発表した。今年9月に開かれた非公式の話し合いでは、池野和己教育長が「平方幼稚園がなくなった方がいいとは思っていない。歴史のある幼稚園をなんとかしたい」と発言していただけに、保護者らが受けた衝撃は大きかった。

 市教育総務課は「保護者の方々の声を受けて3年保育や給食なども検討してきた。しかし経費面での合理性が保てず、市としてはできないという方向に至った」と説明する。

 最低限の園舎の修繕、3年保育や給食の導入、募集方法の見直しなどを求めてきた保護者らは「何一つ実現しなかったのは努力不足ではないか」と市の対応を批判。開会中の12月定例市議会に「上尾市における幼児教育の取り組み、展望についての陳情書」を提出し、募集停止に至った根拠や理由の公開などを求めている。

 また、畠山稔市長には市の幼児教育に対する指針や考え方についての要望書を提出した。

 保護者らは「発達に心配のある子でも先生やアッピーさん(補助者)の目がよく行き届き、健常児と一緒に成長を見守ってくれる唯一無二の幼稚園」「上尾市の宝。その財産をなくすということは上尾市の幼児教育の政策を放棄することではないか」と話している。

 市議会では、2018年12月に「平方幼稚園の教育・環境整備に関する請願」を全会一致で採択。昨年12月には平方幼稚園廃止条例案が市から提出されたが、説明不足を理由に否決した。

 市は廃園に関する条例案の再提出に向けた準備を進めており、来年1月中旬以降に説明会を開く予定だ。

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