<新型コロナ>苦境に追い打ち 緊急宣言で時短営業要請、飲食店から不満や怒り「飲食店だけ標的に」
新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令に伴い、政府は8日、埼玉を含む4都県の全飲食店に対し、酒類の提供を午後7時まで、営業時間を同8時までとする時間短縮営業を要請した。支援事業「Go To イート」の一時停止や会食の人数制限などで苦境に立たされている飲食店。追い打ちを掛ける今回の措置に、県内の関係者からは「標的にされている」「納得のいく説明を」などと不満や怒りの声が上がっている。
「人件費が増えてしまうが、小規模店が生き残るためには、昼間からお酒を飲んでくれる新規客をつかむしかない」。さいたま市浦和区の日本酒ダイニング栄三郎は宣言発令前の5日から、自主的に営業時間を午前10時から午後8時までに切り替えた。店主の田中昇さん(61)によると、これまでは昼と夜の2部制で、夜は午後10時まで営業していたが、当面の間は新メニューを追加した「昼飲みコース」を取り入れた通し営業で乗り切る。
前回の宣言発令以降、売り上げは毎月4割ほど低下。それでも、「お客さんに安心して食事してもらおう」と自粛要請には全て従ってきた。今回も要請を受け入れた田中さんだが、納得はしていない。「できる限りの対策を講じているにもかかわらず、政府が自粛、時短と呼び掛けることで、『外食は全て駄目』という印象が根付いてしまった」と不満をあらわにする。
昨年12月には、県が会食人数を原則4人以下に制限するよう呼び掛けた。そのため、複数人の会食予約を受ける際は「来店前にオーダーを聞き、大皿の提供は避ける」「席の間隔を空けたままでの会食を徹底してもらう」など、店独自のルールに賛同してくれる利用者のみ対応した。
田中さんは、感染防止に取り組んでいることを示す県独自の認定証「彩の国『新しい生活様式』安心宣言」についても触れ、「徹底している店と徹底していない店がある。各店舗の感染対策状況をもう一度きちんと調査し、ガイドラインに従わない飲食店だけを規制の対象にしてほしい」と求めた。
「今回の緊急事態宣言は、飲食店だけを標的にしている」と憤るのは、川越市でスナックを経営する男性(74)。店は昨年3月後半から客足が途絶え、売り上げは例年の10分の1以下に落ち込んだ。
世間からの批判を恐れ、今回の時短要請には「従わざるをえない」のが本音だ。通常午後5時から翌午前0時まで営業しているが、閉店時間を午後8時に前倒しする。ただ、酒類が提供できる時間が限られているため、午後6時までに客が入らなければ、その日は営業しない。経費を削減するため従業員には1カ月間、休みを取ってもらう。
男性は政府に対し「感染者数だけを発表するのではなく、本当に飲食店が一番の感染源なのか、納得のいく説明をしてほしい」と訴えた。