350年で初めて引っ越し 熊谷・平戸の大仏、本堂修繕で移動 17世紀に製作、仏像自体の傷みも判明
老朽化した埼玉県熊谷市平戸の源宗寺本堂の修繕に向け、安置されている市指定有形文化財「木彫大仏坐像」を敷地内の仮小屋に移動させる作業が行われた。製作から約350年が経過した仏像の初めての“お引っ越し”で、仏像自体の傷みも判明した。
仏像は、薬師如来と観世音菩薩の2体。ともに高さが約4メートルで「平戸の大仏(ひらとのおおぼとけ)」と呼ばれ、古くから地域住民らに親しまれてきた。江戸時代の17世紀に製作され、同時期に建立された本堂で安置されていたが、1980年代になると本堂の老朽化が目立つようになった。
2018年、所有者と熊谷市教育委員会、地元商工関係者、檀家組織を中心に「源宗寺本堂保存修理委員会」(木島一也会長)を結成、広く市民から寄付を募るとともに修繕に向けた検討を進めてきた。
3年間で約800人から約3千万円の寄付が集まり、市の補助金500万円と合わせ、約3500万円が修繕費用に充てられる。昨年12月には地元の佐谷田地区自治会員三百数十人も寄付している。
引っ越し当日は、シートで養生された仏像の下に台車などを置き、人力で仮小屋に移した。委託業者のほか、地元住民や立正大学関係者も参加し、仏像の大きさに驚きの声を上げていた。
移動で判明したのは経年劣化による仏像の傷み。仮小屋から完成予定の本堂に再度移動する時には仏像を寝かせてつり上げる作業も必要になってくるという。
修繕事業を監修する熊谷市江南文化財センターの山下祐樹主任(37)は「今後も地域住民と産官学の連携を続けて、無事完成を目指したい」、保存会事務長の山川宏之さん(65)は「防災を考えると外構のかさ上げも必要となってくる。引き続き募金活動にご協力いただけるとうれしい」と話している。
11月頃の完工を予定。移動した仏像の修繕も合わせて実施される。進捗(しんちょく)状況は、市ホームページやブログ「熊谷市文化財日記」などで報告される。