一人一人に何気ない日常が…“同世代”の被災者に背押され、学び、伝える 埼玉・聖学院大生、高校で授業 #知り続ける
東日本大震災の津波で、児童108人のうち74人と教職員10人が犠牲になった宮城県石巻市の市立大川小学校。埼玉県上尾市の聖学院大学は震災が起きた2011年から、学生が東北地方の被災地を訪れて学習やボランティアを続けている。当時の大川小児童の思いを伝え、命に向き合ってもらおうと、川越市菅原町のおおぞら高校川越キャンパスで7日、学生が生徒に防災・ボランティア授業を行った。
授業には、川越キャンパスで学ぶ1~3年生16人が出席した。聖学院大の学生は4年生の高寺美桜さん(21)と高橋吏紀斗さん(22)、3年生の江渡遥加さん(21)と湊大雅さん(21)が参加。高寺さんが進行役を務めた。
津波を逃れた大川小の元児童らでつくる「Team大川 未来を拓(ひら)くネットワーク」が、震災遺構として公開されている学校跡で行った企画のニュース映像を紹介。活動に携わった一員の高寺さんが「失われた命と向き合い、被災者に寄り添い支えるとは」との問いを出した。生徒らは4班に分かれ、学生と議論。意見を発表した。
3年生の山本弥生さん(17)は「被災者の思いを知ることから始めたい」と言う。自身もボランティア活動に関わる2年生の増田友哉さん(17)は「互いを理解し合って取り組まなければ」と誓った。同キャンパスでは、3年前から防災教育を実施。授業を依頼した平野千恵コーチ(38)は、「貴重なメッセージをもらえた」と感謝する。
コロナ禍で訪問できない期間はあったが、聖学院大は19年からTeam大川のメンバーと交流している。高寺さんは、昨年冬のツアーに初めて参加。遺構内にある大川震災伝承館で、現在も行方不明となっている女子児童のランドセルなどが展示されているのを見つけ、誕生日を目前に被災した事実を知って衝撃を受けたという。「私より1歳上の子。小学生時代の自分と重なり、誕生日を待ち望んでいただろうと想像できた。一人一人に何げない日常があったことを、みんなと一緒に考えたい」と行動に移した。
昨夏には、大川小に通う妹を失った女性が監督した映画2作品の学内上映会を開催。学園祭でも企画展示を行った。今年2月のツアーでは、Team大川の提案で大学の仲間を案内するガイド6人に選ばれ、女子児童の遺品展示の前で思いを語っている。
高寺さんは震災当時、小学校3年生だった。長野県上田市内の学校で、経験したことのない揺れに見舞われたのを覚えている。「私たちは震災を記憶している一番下の世代ではないか。命の大切さを考えることで、想定外を予測する力が付き、災害への備えができるはず」と言う。同大ボランティア活動支援センターのアドバイザー、川田虎男さん(44)は「震災は風化の段階に入りつつある。誰かが伝えていかなければ」と、継承の重要性を強調した。