埼玉新聞

 

一生ものの「卒業記念」 中3対象に助産師が性教育の講演会 自分も相手も大切に…“性”と“生”学ぶ

  • 体の変化や性交、妊娠などについて、分かりやすく丁寧に話す助産師の田川智美さん=埼玉県さいたま市立第二東中学校武道場

    体の変化や性交、妊娠などについて、分かりやすく丁寧に話す助産師の田川智美さん=埼玉県さいたま市立第二東中学校武道場

  • 体の変化や性交、妊娠などについて、分かりやすく丁寧に話す助産師の田川智美さん=埼玉県さいたま市立第二東中学校武道場

 埼玉県さいたま市大宮区の市立第二東中学校(板東千里校長、生徒数578人)で4日、今年卒業する3年生を対象にした性教育の講演会が行われた。同校PTA(荒川ゆり子会長)が、旅立っていく子どもたちに自分自身の体や性について知ることで、自分も相手も大切にする心を育んでほしいとの思いから卒業記念として開催した。

 講師は助産師(看護師、受胎調節実施指導員)の田川智美さん。田川さんは2013年から市内外の小中学校で、児童や生徒に命の大切さや性と生の話をしたり、保護者向けに「家で実践できる性」について講演している。この日は参加した3年生約180人に「巣立ちゆくあなたへ~これから大切にしてほしいこと~」と題して、命の誕生や女性の体、男性の体の変化、デートDVなどについて生徒たちに分かりやすく話した。

 田川さんは、まず「苦手だなって人や聞きたくないと感じる人は、退出もOK。他の事を考えているのも自由」と生徒たちに語りかけた。しかし講演中の約2時間、休憩時間以外に席を立つ生徒もなく、ほぼ全員が真剣な表情で、田川さんの話に耳を傾けた。

 田川さんは「ホルモンの変化は人それぞれ。思春期の自分に起こっていることを自然に待ってほしい」とした上で、月経(生理)や射精の仕組みを解説。マヨネーズの容器を手にぎゅっと絞る動作をし「これが子宮で起こっているのが月経。なかなか出ない時は強い力を加えるよね。その時の痛みが月経痛」と説明。月経中に起きるさまざまな症状も話し、男子への理解を促した。また射精や勃起についても語り、自身の腕を使って男性器の洗い方も伝授した。

 「セルフプレジャー」という単語を使い、「自分で自分の体を喜ばせることは良いこと。でもお作法がある。強さや清潔な手、プライベートな空間ですることに気をつけて」と呼びかけた。さらに性交や妊娠の仕組みに触れ、「セックスは相手との体と体の大切なコミュニケーション」としつつも、妊娠したくない時期の避妊の必要性を説いた。コンドームを手に取り「ドラッグストアやコンビニで誰でも買える」と教え、避妊に失敗した時のアフターピル(緊急避妊薬)、妊娠検査薬の使い方、中絶、性感染症についても解説した。

 またデートDVについては、事例を用いて生徒たちと対話をしながら「相手が積極的に、その行為に同意しない場合は暴力になる。相手の気持ちが大切」と話した。

 講演後、体育委員長の伊藤風雅さんは「今後性に関わることが増えると思うので、今日学んだことを生かしたい」と話した。女子生徒の一人も「避妊方法など知らなかった。将来に役立てたい」と語った。

 現在、中学校の保健体育の学習指導要領には、性交や避妊、中絶は取り扱わないとする「はどめ規定」がある。1998年度の改定時に盛り込まれ、この指導要領を巡っては度々論争が起きている。義務教育下の子どもたちは、妊娠の経緯についてインターネットなどで得る知識に頼っているのが実情。

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