埼玉新聞

 

<新型コロナ>さいたま市オンライン成人式、視聴1万回超も「寂しい」 再会の機会を考えた市長が提案

  • 実行委員会メンバーとして、約9カ月にわたり式典の準備に取り組んだ10人の新成人=11日午後、さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナ

 埼玉県さいたま市のオンライン成人式が成人の日の11日、同市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催された。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、市は5日に人を集めての開催中止を決定。今年の新成人1万3238人のうち、実行委員会の代表10人のみが出席して、「はたちの誓い」を宣言し、式典の様子はライブ配信された。

 10区の代表で実行委員として、約9カ月にわたり式典の準備を進めていた新成人10人が1人ずつ、誓いをマイクの前で述べた。「人に優しく自分の意思を示せる大人になります」「どんなに厳しい時代でも暗く長いトンネルの向こうに希望の光をともす役割を担える大人になります」などと誓った。

 式典後、大学生藤原斗哉(とうや)さん(20)=桜区=は「今まで支えてくれた人への感謝の気持ちを持ちつつ、恩返しできる大人になりたい」。大学生石川明日香さん(20)=大宮区=は「両親が家で見てくれていると思う。代表になって実行委の仕事を任されたことは良かった」と話していた。

 清水勇人市長は式辞で、オンライン開催について「おわびを申し上げます」と述べた上で、「夢や志を抱いて、命を大切に生きてほしい。医療現場は厳しい状況が続いている。きょうは会食を控え、感染防止に努めてください。それが社会に貢献する第一歩です」と呼び掛けた。渋谷佳孝市議会議長も祝辞を述べ、浦和レッズの選手らのメッセージが放映された。

 式典は午前11時半から始まり、予定時間の30分をオーバーして約45分で終了した。動画投稿サイト「ユーチューブ」でライブ配信し、開催中は約2600回視聴され、夕方には1万回を超えた。今後、市のホームページを通して視聴できるようにする。

 会場のアリーナ周辺やけやきひろばではこの日、多くの新成人や保護者が集まり、歓談したり記念撮影をしていた。市側は「オンライン開催でライブ配信します」「長時間の滞在は密になります」と拡声器で呼び掛けていた。

 短大生の足立征妃那(せいな)さん(20)は、母親の真由美さん(50)が30年前に着た振り袖姿で成人の日を迎えた。姉も着ており、「自分の子どもにも着せたい」と笑顔だった。友人や幼稚園の教諭が晴れ姿を見たいと千葉県から訪れるため、けやきひろばに来たという。「コロナ禍で、できることは限られているけれど、どう生きるかは自分次第。大人という自覚を持って、目の前のことに一生懸命頑張りたい」と抱負を語った。

■「再会の機会を」式典で訴え

 さいたま市のオンライン成人式で、「はたちの誓い」を宣言した実行委員会メンバー10人を代表して、大学生森本茉莉衣(まりえ)さん(20)=中央区=が、コロナ禍での開催に感謝の言葉を述べた上で、改めて同級生らと再会の機会を設けてほしいと市側に訴えた。実行委の大学生島田雄大さん(20)=緑区=によると、「10人だけでは寂しい」とメンバーで話し合い、要請することを決めたという。

 森本さんは「正直、楽しみにしていた同級生との再会もかなわず、とても残念に思う。従来の開催が難しいのは理解していますが、感染が収まり、改めてみんなと再会ができることを心から願っています。私たちの思いを受け止めて、機会をつくっていただけるとうれしいです。どうかよろしくお願いします」と訴えた。

 清水勇人市長は式典後の取材に、「感染拡大が収まった段階で、何らかの再会する機会をぜひつくっていければと思う」と述べ、新成人の訴えに応える意向を示した。同市は5月に誕生20周年を迎え、10月に記念式典を開催する予定。清水市長は「その中で皆さんと再会できる機会につながればと思う」とも話した。

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