埼玉新聞

 

家賃支援急増21・4倍に 昨年10月末で県内給付金8千件超 新型コロナ失業で県営住宅の提供も

  • 埼玉県庁=さいたま市浦和区高砂

 離職などを理由とする経済的困窮者に家賃費用を給付する「住居確保給付金」の本年度の埼玉県内支給決定件数が2020年10月末時点で8185件に上り、昨年度(383件)の21・4倍に増えていることが、埼玉新聞調べで分かった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う支給要件の緩和が増加の一因とみられるが、生活者への経済的影響が浮かび上がる結果となった。政府は8日から、埼玉など1都3県に緊急事態宣言を再発令。支給決定件数が県内最多のさいたま市は「相当数の離職者が見込まれる。住居確保給付金の申請の増加を想定し、対応していく必要がある」と今後を見据えている。

 県社会福祉課などによると、住居確保給付金は、離職などによって経済的に困窮し、住居を失ったり、その恐れがある人に対し、求職活動などを条件に家賃費用を有期で給付する制度。負担割合は国が4分の3で、県や市が4分の1。昨年4月からは、休業などによる収入減で住居を失う恐れがある人も申請対象とするなど、要件が緩和された。

 給付期間は原則3カ月で、最長9カ月(本年度中の新規受給者に限り最長12カ月)。昨年10月末時点の県内市町村別支給決定件数(新規、延長、再延長の総数)の最多はさいたま市の1508件(前年度69件)。以下、川口市948件(同46件)、所沢市818件(同26件)と続いた。

 政府は昨年4月に1度目の緊急事態宣言を発令した。さいたま市の同月の支給決定件数(新規)は30件だったが、5月が300件、6月は303件と増加した。同市生活福祉課は「自粛期間中から新規が多くなる傾向にあった」と分析する。同市の場合、月額の支給上限額は、単身世帯が4万5千円、2人世帯が5万4千円、3~5人世帯が5万9千円となっている。

 19年度の支給決定件数が0件だった秩父市の本年度の件数は、10月末時点で34件に上った。同市社会福祉課は「(1度目の)緊急事態宣言後に仕事がストップするなどの影響からか、5月の新規件数が最も多くなっている。飲食業や建築関係の方からの申請が目立った」としている。

 県は、新型コロナの影響による解雇や休業などを理由とした住居確保困難者を対象に、最低家賃の半額で県営住宅を提供している。県住宅課によると、提供期間は原則半年だが、20年12月末時点で、提供する109戸のうち74戸に85人が入居。世帯主は40~50代の男性が多くを占めている。

 同課は「緊急事態宣言が出て、入居の問い合わせが増えることが想定される。提供住宅がさらに確保できるか検討している状況」と説明した。

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