埼玉で評判の“夜カフェ”男女ら満喫、グルメも注目“手作りプリン”1番人気 2年前オープンから人気じわり、本好きな客ら集まる「宵イ茶屋文庫」 夜間中心の営業、仕事帰りに「食事もすごくおいしい」
手元を照らす柔らかな光、かすかに流れる音楽。まちに夜のとばりが降りた後、コーヒーを傍らにゆっくりと本を開く。2022年5月にオープンした蓮田市の「宵イ茶屋文庫」は、夜間営業が中心の小さなブックカフェ。仕事帰りに読書を楽しみ、充実した飲食メニューも味わえると“本好き”の間で評判を呼んでいる。
蓮田駅西口から徒歩5分、小道の奥にひっそりとたたずむ同店。古い庄屋風の大きな白暖簾(のれん)をくぐり引き戸を開けると、店主の鈴木栄美(えみ)さんが和やかに迎えてくれた。
「仕事帰りの夜に気兼ねなく寄って、ほっと一息つける場所がほしかった」と話す鈴木さん。カフェに勤めた経験を生かし、生まれ育った蓮田に自身の思いを形にした店を構えた。「居心地の良さ」にこだわった店内には、小さなテーブル付きの6席と2人掛けが2席。幅広い年代の男女客らが静かに本と向き合っていた。市内に住む40代の常連女性は「自分のアンテナでは拾えない作品と出合える、すてきな場所。食事もすごくおいしいんですよ」とほほ笑む。
「昔から本が好きだった」という鈴木さん。「紙媒体の魅力を伝えたい」と、自ら選書した約100冊を店内に並べる。特に流通ルートに乗りづらい小さな出版社の本や、個人で自主制作する小冊子「ZINE(ジン)」を中心にそろえた。「書店が扱わなくても面白くて心に響く本はたくさんある。自由に読んで『自分の特別な一冊』を見つけてもらえたらうれしい」
一人で切り盛りする忙しさの中、「おなかがすいては、リラックスできませんよね」と飲食にも力を注ぐ。1番人気は、納得がいくまで試作を重ねた手作りプリン(税込み430円)。濃いカラメルのほろ苦さが、卵のこくと甘さを引き立てる大人のおやつだ。地場野菜たっぷりの、夕食メニューも提供している。
店名に「心置きなく、宵(夜)の『ひとり時間』を楽しんでほしい」という気持ちを込めた。案内書きへ控えめに記された「会話の声はお静かに」。もし、この一文に気が付かなかったとしても―。誰もが自ずと口をつぐみ、特別なひとときに身を委ねたくなるだろう。
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【メモ】蓮田市上2の3の22光ハイツ103。月・火・土曜午後2時~同10時、金曜午後5時~同11時。詳しくは同店のインスタグラム。