いつかこの場所で…16歳の夢かなう 発達障害の女子高生「apipo」さん、埼玉・近代美術館で個展 4月2日から
発達障害を抱える埼玉県吉川市在住の女子高校生「apipo(あぴぽ)」さん(16)=仮名=が4月2日から、県立近代美術館(さいたま市浦和区)で個展を開く。小学生時代から描き集めたペン画など約80作品を公開する。絵と出合い、前を向く勇気を見つけたapipoさんは「来場者に楽しんでもらいたい」と展示を待ち望んでいる。
apipoさんは、自閉スペクトラム症と場面緘黙(かんもく)症があり、コミュニケーションを苦手としている。小学5年から中学3年まで集団生活になじめず、不登校だった。生きづらさを感じては落ち込み、暗い気持ちになる時も多かった。
そんなapipoさんに光を与えてくれたのが「絵」。幼稚園入園前から描き始め、暇さえあれば机に向かった。小学3年生の時から越谷のアトリエに通い始め、5年生で本格的な創作活動に取り組んだ。
apipoさんが描くのはペン画が中心。1ミリ以下の極細ペンで細かい線を何層にも重ね、アクリル絵の具とイラストマーカーで色付けする。テーマは空想。ブタがドレスを着てバイオリンを演奏する姿や、ウサギが移動図書館を開く様子など、頭の中で物語を創作して表現する。多い時で1日4~5時間ほどペンを動かす。
個展は中学1年生の時からこれまで4回実施。いずれも小規模会場で展示作品が限られていた。今回の県立近代美術館はapipoさんが小学3年生の時に訪れ、豪華な建物と会場の壮大さに感銘を受けた場所。「絵をもっとうまくなり、いつかこの場所で個展を開きたい」と家族に約束した。ようやく夢が実現する。
展示に向けた新たな挑戦として、今まで苦手だった水彩絵の具を使い始めた。繊細なペンの上に薄く塗ることで作品全体に温かさが生まれ、表現の幅が広がった。個展への大きな自信につながった。
絵はapipoさんにとって生きがい。自分の障害に苦しむことも多い中、大好きな絵を描いている瞬間は夢中になれる。
将来は絵を描く仕事を希望するapipoさん。「いつか世界中の人々に私の絵が届いたらいいな。作品を通して何かを感じてもらえたら幸せ」と個展を楽しみにしている。
■apipoのペン画展
4月2日から7日まで、県立近代美術館の一般展示室4で開催。過去のペン画のほか、現在取り組む新作など約80作品を公開する。期間中はapipoさんも来場予定。午前10時から午後5時半。入場無料。
問い合わせは、滝沢さん(電話070・3326・0522)へ。